脱炭素への取り組みが進展ー日系企業調査(アジア・オセアニア編)

(中国、香港、マカオ、台湾、韓国、ASEAN、ベトナム、タイ、シンガポール、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、カンボジア、フィリピン、ラオス、インド、バングラデシュ、パキスタン、スリランカ、オーストラリア、ニュージーランド)

アジア大洋州課

2022年12月15日

ジェトロが12月15日に発表した「2022年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」から、日系企業によるサプライチェーンにおける脱炭素への取り組みが進展していることが分かった(注1)。

アジア・オセアニア20カ国・地域において、温室効果ガスの削減など、「脱炭素化への取り組みを行っている」と回答した企業の割合は37.1%だった。「今後取り組みを行う予定」の企業も含めると71.7%になり、前年(61.8%)から大幅に上昇した。業種別では、輸送機器や鉱業・エネルギーで既に取り組んでいる企業が6割以上、取り組み予定も含めると約9割にのぼった。具体的な取り組み内容としては、「省エネ・省資源化」(69.5%)、「再エネ・新エネ電力の調達」(41.2%)などが挙げられた。

一方、脱炭素化に向けた課題として、「コスト増」「制度の不明確さ」や「把握の難しさ」などを挙げる声が目立った。中でも、コストの増加については、「顧客や取引先の理解が得られない」「競合他社の取り組みがない状況で脱炭素化を進めることが難しく、インセンティブを与える制度が必要」との声が聞かれた。​

人権デューディリジェンスは6割が内容理解に課題

サプライチェーンにおける人権問題を「経営課題として認識する」企業の割合(注2)は前年(54.1%)より上昇し、57.8%となった。他方、「人権デューディリジェンス(注3、以下、人権DD)を実施している」企業の割合は25.0%で、「今後実施予定」の企業を含めても37.5%にとどまった。人権DDへの取り組みは国・地域により差が大きく、関連法が法制化、あるいは法制化の動きがあるオセアニア(注4)で61.3%と高かった一方、南西アジアで41.7%、ASEANで34.9%となった。

また、人権DDを実施する上での課題としては、「人権に関する内容の理解」が60.7%と最も多かった。その他、「経営幹部層の関与」(36.3%)、「事業が人権に与える負の影響の特定や評価」(35.1%)、「優先度の高い人権リスクへの予防と対処」(30.7%)を挙げた企業が3割を超えた。

なお、人権DDを実施している企業のうち、「調達先に人権方針への準拠を求めている」と回答した企業は全体の67.1%となった。人権DDを実施している企業での具体的な取り組み内容としては、「リスク把握の情報収集」(53.2%)が最も高く、「サプライチェーン可視化」(42.6%)、「自社による現地調査・監査」(33.7%)、「人権相談(苦情受け付け)窓口設置」(29.6%)、「専門家(法律事務所など)への相談」(29.6%)などが続いた。

(注1)本調査結果のうち、営業利益見込みや景況感、経営上の課題については2022年12月15日記事参照

(注2)サプライチェーンにおける人権問題に関する設問は、中国、香港、マカオ、台湾では調査対象外とした。

(注3)人権DDとは、自社やサプライチェーンを通じて生じ得る人権への負の影響を特定、停止、防止、軽減し、救済するための継続的なプロセスのこと。

(注4)オーストラリアでは2019年に現代奴隷法が施行された(2021年6月30日付地域・分析レポート参照)ほか、ニュージーランドでも現代奴隷などのリスクに対応して法制化する動きがみられる(2022年4月14日記事参照)。

(山口あづ希)

(中国、香港、マカオ、台湾、韓国、ASEAN、ベトナム、タイ、シンガポール、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、カンボジア、フィリピン、ラオス、インド、バングラデシュ、パキスタン、スリランカ、オーストラリア、ニュージーランド)

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