ASEAN、南西アジアで業績回復続く、海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)

(中国、香港、マカオ、台湾、韓国、ASEAN、ベトナム、タイ、シンガポール、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、カンボジア、フィリピン、ラオス、インド、バングラデシュ、パキスタン、スリランカ、オーストラリア、ニュージーランド)

中国北アジア課

2022年12月15日

ジェトロは1215日、「2022年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」の結果を発表した。本調査は、822日から921日にかけてアジア・オセアニアの日系企業14,290社を対象に、オンライン配布・回収を行ったもので、4,392社から有効回答を得た(有効回答率30.7%)(注1)。

黒字企業の割合が65.6%に上昇、新型コロナ前の水準に

調査結果によると、2022年の営業利益見込みについて、黒字企業の割合は全体で65.6%と前年(63.0%)から上昇、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染拡大前の2019年(65.5%)の水準まで回復した。特に、インド(71.9%)は、新型コロナの反動を中心とした内需拡大により、黒字企業の割合は前年に続き上昇した(2022年12月15日記事参照)。インドネシア(73.2%)、シンガポール(73.5%)は前年比でそれぞれ9.8ポイント、7.1ポイント上昇し、新型コロナ前の2019年を上回った。ASEANは、フィリピンを除く全地域で黒字割合が前年より上昇し、回復が続いている。中国、香港・マカオは、ゼロコロナ政策の影響を受け黒字割合が減少、前年のV字回復から落ち込み、新型コロナ前の水準を下回った。

景況感を示す2022年のDI値(注2)は13.8ポイントとなり、前年(19.8ポイント)を下回った。ASEAN20.0ポイントで、前年から6.0ポイント上昇した。一方で、中国はゼロコロナ政策の影響を受けてマイナス15.1ポイントとなり、前年(14.7ポイント)から大幅に低下した。

コスト上昇が経営上の負担に、価格・販売推進に課題も

アジア・オセアニア全地域・全業種の共通の経営課題として、「従業員の賃金上昇」が70.9%と最多になった。次いで「調達コストの上昇」(69.0%)となり、コスト上昇による業績への圧力の高さがうかがえた。

また、製品・サービスの性能・品質、研究開発・技術、企画・設計、アフターサービスに関しては、日本企業の強みの認識が高い。他方、価格やマーケティング・販売を弱みとして認識している企業が多く、「製品・サービスの価格」が33.3%、「マーケティング・販売」が19.1%となり、各地での競争環境における課題がみられた。

さらに、進出先を主要な販売先とし業績が堅調な企業300社(注3)と、全体平均を比較すると、「マーケティング・販売」を自社の強みとする比率の差が最も顕著となり、また経営判断の早さにも差がみられた。

(注1)本調査結果のうち、脱炭素への対応等については2022年12月15日記事参照。また、1124日には同調査の全世界編の結果を発表済み(2022年11月24日記事参照)。

(注2Diffusion Indexの略で、営業利益が「改善」する企業の割合から「悪化」する割合を差し引いた数値。

(注3)進出先を主要な販売マーケットとする企業のうち、2022年の売上高が黒字見込みで、2022年と2023年ともに業績が改善見込み、かつビジネス展開を拡大すると答えた企業(300社)。

(亀山達也)

(中国、香港、マカオ、台湾、韓国、ASEAN、ベトナム、タイ、シンガポール、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、カンボジア、フィリピン、ラオス、インド、バングラデシュ、パキスタン、スリランカ、オーストラリア、ニュージーランド)

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