カナダの対米首席貿易交渉官、対米交渉の現状を説明、正式な貿易交渉は見通せず

(カナダ、米国)

調査部米州課

2026年10月26日

カナダの対米首席貿易交渉官を務めるジャニス・シャレット氏は10月22日、トロントで開催された「トロント・グローバル・フォーラム」に登壇し、米国との貿易交渉の現状やカナダの立ち位置について説明した。シャレット氏は、米国との意思疎通は続いているものの、正式な貿易交渉に戻る時期は見通せないと明らかにした。一方で、カナダは協議の継続に向けて門戸を開いていると強調した。

米国による関税措置への対応について、シャレット氏は「これまで米国と築いてきたような無関税貿易に戻ることを期待すべきではない」と述べた。その上で、カナダ企業や農家、労働者にとって、追加関税の対象品目を可能な限り絞り、低い関税率と良好な米国市場へのアクセスを確保する方策を検討する必要があるとした。

米国の中間選挙が貿易交渉に与える影響について、直接的な言及を避けつつ、選挙結果にかかわらずトランプ政権は続くことから、同政権の通商政策は中間選挙後も維持されるとの見方を示した。そのような中でも、カナダはこれまで掲げてきた交渉目的に引き続き注力していくとした。

カナダ・米国・メキシコ協定(CUSMA、注)について、最良の貿易協定だったと評価した上で、同様の内容で合意することは難しいとの見通しを示し、「カナダは米国との新たな貿易関係を築く移行期にある」と述べた。その具体的な内容や移行に要する時間は「分からない」とした。

対米依存が続くカナダ経済について、カナダの貿易や輸送、エネルギー、データなどの各インフラが、長年にわたる米国との経済的相互依存を背景に、南北方向を軸に発展してきたと指摘した。その上で、カナダ企業は、欧州やアジアなどとの東西方向のつながりを強化し、貿易相手を多角化する方策の検討を進めるべきとの見解を示した。カナダが多くの国・地域と自由貿易協定(FTA)を締結していることにも触れ、世界各地に大きなビジネス機会があるとした。

米国の通商政策がカナダの国内産業に及ぼす影響への政府対応について、11月5日に発表予定のカナダ連邦予算案にカナダ企業や労働者を保護するための施策が盛り込まれることへの期待感を示した。また、10月21日にカナダ政府とオンタリオ州政府が発表した産業支援策に触れつつ(2026年10月26日記事参照)、政府による国内産業への支援が今後も続くとの期待を示した。

特に自動車産業について、「カナダは自動車を生産する国であり続ける」と強調した。その上で、カナダで自動車を生産する各社が、労働者やサプライヤーと連携し、操業の効率性や生産性を最大限に高める必要があるとした。また、完成車メーカー(OEM)と部品メーカーとの連携を強化するとともに、競争力のある自動車産業を維持するため、関税負担の軽減策を検討する必要性を示した。

(注)米国ではUSMCA、カナダではCUSMA、メキシコではT-mecと呼ばれる。

(木村勇翔)

(カナダ、米国)

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