JICAとジェトロがセミナーで調査報告、ウクライナ物流で周辺国の役割高まる

(ウクライナ、ポーランド、スロバキア、モルドバ)

調査部欧州課

2026年10月09日

国際協力機構(JICA)とジェトロは10月2日、ウクライナの復旧・復興を見据えた周辺国の物流事情に関するセミナーを東京都内とのオンラインで開催した。モルドバやポーランドなど、ウクライナ周辺国を対象とする調査結果が報告され、物流面での可能性と現状の課題が示された。

モルドバについては、ウクライナとEUを結ぶ物流回廊として、鉄道貨物輸送の重要性が高まっていることが報告された。一方、モルドバ国鉄(CFM)の機能不全などが輸送能力上の制約となっている。JICAの調査を担当したオリエンタルコンサルタンツグローバルの鈴木弘敏氏は、鉄道輸送の低迷要因としてインフラの老朽化などを挙げた。現在、EUなどの支援で改修中であるものの、工事後の保守は支援対象外のため、西側諸国とのシナジーの点からも日本の支援による実施が期待されると述べた。

ウクライナ西部の物流を調査したジェトロ・ワルシャワ事務所の余田知弘次長は、ウクライナとEUでは鉄道の軌間が異なることが越境輸送上の課題となる一方、ウクライナで使われる1,520ミリの広軌がポーランドやスロバキア側まで乗り入れる既存路線もあり、国境を越える物流インフラはすでに存在すると指摘した。リビウ周辺ではEUの欧州横断輸送ネットワーク(TEN-T)との接続強化や、欧州標準軌の導入に向けた整備も進められているという。ウクライナ西部とEUとの国境地域には異なる特徴を持つ複数の越境経済圏が形成されていると説明。ポーランドからリビウにつながるルートは物流、人材、IT、投資などとの結び付きが強い一方、スロバキア東部からザカルパッチャ州につながるルートは、自動車や鉄鋼など中東欧の製造業集積との結び付きが特徴だとした。ウクライナ西部をEU・中東欧産業圏とウクライナをつなぐ地域として捉えることが重要だと述べた。

同事務所の柴田紗英所員は、ドイツのハンブルク港やルーマニアのコンスタンツァ港などを経由地とする、日本からウクライナへの主要な輸送ルートについて紹介した。コンスタンツァ港は、ロシアからの攻撃により機能が制限されたオデーサ港の代替としてだけでなく、中国~欧州を東西につなぐ中央回廊と、欧州を南北につなぐ輸送網が交差する重要拠点として発展していると説明した(2026年5月19日付地域・分析レポート参照)。

国土交通省の川﨑俊正大臣官房参事官は、日本企業の技術をウクライナの復旧・復興に活用する官民協議の枠組み「JUPITeR」の活動を紹介した。ウクライナの復旧・復興需要は試算で約80兆円に上るとし、官民協議を通じて日本企業の参入を後押しするとともに、日本企業が持つ輸送・インフラ技術による貢献を目指すと説明した。

写真 会場の様子(ジェトロ撮影)

会場の様子(ジェトロ撮影)

(後藤大輝)

(ウクライナ、ポーランド、スロバキア、モルドバ)

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