ロシア政府、ドイツ企業メトロのロシア法人を一時管理下に

(ロシア、ドイツ)

調査部欧州課

2026年10月06日

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は9月28日、ドイツの大手小売・卸売企業メトロ・キャッシュ・アンド・キャリーのロシア法人(以下、メトロ・ロシア)を政府の一時管理下に置く大統領令第689号に署名した。この大統領令は、非友好国企業の資産を一時管理下に置くことを定めた2023年4月25日付大統領令第302号(2023年5月8日記事参照)に基づく措置。資産管理は9月8日に設立されたトルグ・ルス管理会社が担う。同社の所有者はメトロ・ロシアのヨハネス・トライ最高経営責任者(CEO)であり、実質的な経営・管理体制は維持されているとみられる。

今回の措置は、9月17日にフランスのオーシャン(小売り)、レマナ・プロ(旧ルロワ・メルラン、ホームセンター事業)、エフエム・ロジスティク(物流)のほか、スイスのネスレ(食品・飲料製造)などのロシア事業が一時管理の対象となったのに続くものだ。これらの企業の資産は、ビジネス・コンサルティングを主業とするL.E.V.マネジメントの管理下に移管された。メトロ・ロシアが追加されたことにより、一時管理下にある案件は21件となった(添付資料表参照)。

ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は9月29日、本件について、非友好国との対立激化を踏まえた外部管理の導入が目的であるとし、所有権の変更を意図した措置ではないと強調している(「インターファクス通信」9月29日)。メトロ側は今回の措置を受けて、ロシアのメディアRBKに対し「従業員やインフラの安全確保および事業継続の必要性に基づいている」と説明した(「RBK」9月28日)。この説明は、重要インフラ施設の資産を一時管理下に置くことを定めた大統領令第604号の趣旨に沿うものだ(2026年9月2日記事参照)。

オルロワ・エルモレンコ法律事務所のパートナー、セルゲイ・エルモレンコ弁護士は、一時管理下に置かれた対象企業の選定について、「企業や株主の法域(登記国)、ロシア事業の規模、消費市場や物流での重要性に加え、外国株主との関係性などを総合的に考慮した結果だ」と指摘。その上で、「ロシアで事業を継続しているだけでは経営権の維持は保証されない」と述べた(法律専門サイト「PRAVO.RU」9月29日)。これまでは、撤退や事業縮小の意向の表明がなく、ロシア事業を継続している企業であれば比較的安全と考えられてきたが、今回の事例により市場への影響力が高く、重要インフラを有する場合は必ずしもそうではないことを示した。

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