オーストラリア・アデレードで水素関連の国際展示会開催、産業需要を起点とした水素事業化を議論
(オーストラリア)
シドニー発
2026年10月01日
水素関連の国際展示会「Asia-Pacific Hydrogen Summit&Exhibition 2026
」が9月3~4日、南オーストラリア州アデレードで開催された。400人以上が参加し、20社以上の事業者が出展した。オーストラリアでは、豊富な再生可能エネルギー資源を生かした水素の大規模生産・輸出が期待される一方、コスト競争力の確保や需要創出が商用化に向けた主要課題となっている。今回は、アンモニア・肥料、船舶燃料、グリーン鉄(注1)など、産業分野における実需を起点とした案件形成について議論された。
冒頭のセッションでは、産業設備には固有の投資・更新サイクル(Industrial clocks)があるため、各産業の設備更新のタイミングに合わせて最適な脱炭素化手法を選択する必要性が指摘された。この考えは産業別討論にも表れ、海運ではメタノールやアンモニアなどの船舶燃料と供給インフラを一体的に整備する必要性や、鉄鋼では製鉄所を主要な需要先とする考えが示された。
オーストラリア化学大手オリカ(ORICA)は、7月に最終投資決定したニューサウスウェールズ(NSW)州のハンターバレー水素ハブプロジェクトを紹介した。既存アンモニア工場でグリーン水素を利用する計画で、長期の再エネ電力調達や自社需要、政府支援が事業化を後押ししたと説明した(2025年7月18日記事参照)。
住友商事は、資源大手リオ・ティント(Rio Tinto)と進めるクイーンズランド(QLD)州グラッドストンのアルミナ精製所での水素利用実証と、その商用化構想「Project Midori」(2025年11月28日記事参照)を紹介した。既存アルミナ精製所を主要需要先とし、段階的な拡張による事業化を目指している。第1段階の120メガワット(MW)案件(注2)は、政府の水素生産価格差支援策「Hydrogen Headstart Program
、(注3)」第2ラウンドで本申請に進む7案件の1つに選定されている。
農業分野では、ニュージーランドの水素事業会社ヒリンガ・エナジー(Hiringa Energy)とNSW州の綿花生産大手サンダウン・パストラル(Sundown Pastoral)による肥料・燃料の低炭素化事業について紹介された。州政府の支援を受け、5月に水素・アンモニア製造施設の建設を開始した。農家自身が需要家として参画し、肥料・燃料の安定調達や低炭素綿花による製品の高付加価値化を目指す。討論では、実需から事業を組み立て、モデルの展開を図る考えが示された。
今回のサミットを通じ、水素の生産規模だけでなく、誰が何に利用するのかを明確にし、確実な需要、競争力のある電力、既存インフラ、政府支援を組み合わせ投資判断につなげることが、商用化の重要な条件として共有された。
セッションの様子(ジェトロ撮影)
(注1)水素の活用などにより、製造工程で発生するCO2排出量を大幅に削減して生産された鉄鋼製品。
(注2)リオ・ティントのアルミナ精製所向けに再エネ由来水素を供給する120MW規模の水素製造案件。
(注3)生産コストとオフテイカーへの売価の価格差を生産クレジット(補助金)のかたちで連邦政府が補填(ほてん)する施策。補助期間は、操業10年間における実際の生産量に基づいて補助を受ける。
(ストーリー愛子)
(オーストラリア)
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