「APAC水素サミット」で日本企業向けセミナー・ネットワーキング会を開催
(オーストラリア)
シドニー発
2025年11月28日
ジェトロは11月21日、「APAC水素サミット2025(APAC Hydrogen 2025 Summit)」に参加した日本企業や自治体を対象として、オーストラリア国内の水素関連プロジェクトを紹介するセミナー・ネットワーキング会を、オーストラリア貿易投資促進庁(Austrade)の協力のもと、オーストラリア水素協議会(AHC)と共同で開催した。会場には、サミット出展者を含む、水素関連企業や金融機関に加え、日本国内で水素活用を目指している東京都や福岡県の関係者など計51人が参加した。
本セミナーでは、将来の輸出を想定した、連邦政府のグリーン水素価格差支援策である「Hydrogen Headstart Program、(注)」に採択された2つのプロジェクトから、新たな水素キャリア開発プロジェクトや、オーストラリア国内産業向けにグリーン水素・アンモニアを供給するプロジェクトまで、各種案件の進捗状況が説明された。また、ネットワーキング時間を設け、参加者間の交流が図られた。
冒頭、Austradeアジアデスク対豪投資ディレクターで、水素・グリーンメタル産業担当リーダーを務めるアブドゥル・エクラム氏から、オーストラリア連邦政府が進める水素ハブ構想や、水素製造にかかるインセンティブなどが紹介された。その後、オーストラリア企業と日系企業から各社のプロジェクトが紹介された。まず、オーストラリア化学大手のオリカ(ORICA)で、アンモニア・グリーン水素を担当するシニアマネジャーのロバート・シンプソン氏からは、ニューサウスウェールズ州で推進する「ハンターバレー水素ハブ(HVHH)プロジェクト」の概要と、同社が進める脱炭素化取り組みのポイントが紹介された。また、地場マーチソン・グリーン・ハイドロジェンのCEO(最高経営責任者)ショハン・セネビランテ氏からは、同社の全体概要に加え、プロジェクトの主要なインフラ要素と段階的計画、プロジェクトタイムライン、連邦ならびに州政府からの補助金を含めた支援状況の説明があった。
続いて、日系企業2社からもプレゼンテーションがあった。1社目のエネオス・オーストラリア水素担当GMの高橋政氏からは、メチルシクロヘキサン(MCH)を水素キャリアとした国際サプライチェーン構築に向けた取り組みが紹介された。また、従来の製法に比べて、製造工程が簡略化され、コスト削減が見込まれる 「Direct MCH」技術のオーストラリアにおける開発も紹介された。2社目のオーストラリア住友商事会社エンジニアリング・マネジャーの川副洋史氏からは、クイーンズランド州グラッドストーンで、同社と鉱業・資源分野の多国籍企業であるリオ・ティント(Rio Tinto)が実施する「Green Chemical & Metal Supply Chain」プロジェクトの一環として、「Project Midori」について説明があった。本プロジェクトは、大規模な再生可能エネルギー由来の水素製造を通して、グラッドストーンにおける、アルミニウム産業の脱炭素化を目指すものだ。現在進行中のヤーウンアルミナ精製工場(Yarwun Alumina Refinery)でのパイロットプロジェクトの大型化に向けた展開計画など、具体的な事業開発状況が共有された。
ブリーフィングでの登壇企業の事業説明(ジェトロ撮影)
参加企業からは、「中長期的に見て、オーストラリアは依然として日本企業にとって最重要の水素供給国になる得ることを再認識した」「昨年もAPAC水素サミットに参加したが、今年度はこれまで事業化に至らなかった案件もある中で、ようやく実現性のあるものに絞り込まれ、オーストラリアにおける水素事業の可能性を改めて実感した」などの声も聞かれ、今後、日豪間の水素事業における連携も期待される。
(注)生産コストとオフテイカーへの売価の価格差を生産クレジット(補助金)のかたちで連邦政府が補填(ほてん)する施策。補助期間は、操業10年間における実際の生産量に基づいて補助を受ける。
(ストーリー愛子、渡邉尚之)
(オーストラリア)
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