欧州委がEU拡大で報告書、ウクライナ加盟見据え「段階的統合」強化へ

(EU、ウクライナ、モンテネグロ、アルバニア、モルドバ)

ブリュッセル発

2026年10月15日

欧州委員会は10月6日、EU拡大に向けた今後の方針をまとめた報告書を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委は、EU拡大は地政学上避けて通れないとの認識を示しており、加盟候補国の加盟実現に向けた取り組みを積極的に支援している。近年では加盟候補国が増える一方で、2013年に加盟したクロアチア以降、新規加盟は実現していない。こうした中で、ロシアのウクライナ侵攻などEUを取り巻く地政学的な状況が急速に変化しており、EU拡大に向けた機運が高まりつつある。そこで今回の政策文書は、加盟候補国への支援策とEUの新規加盟国の受け入れに向けた方策をまとめている。

まず、加盟候補国への支援策としては、欧州委が現在進めている「段階的統合」のさらなる強化を打ち出している。段階的統合とは、既存の加盟プロセスを維持しつつ、加盟候補国の法整備や制度改革の成果に応じて、加盟前に当該分野のEU単一市場やEUプログラムへのアクセスを認めるものだ。加盟交渉が長期化する中で、加盟前から具体的な利益を提供することで加盟候補国の法整備や改革を後押しする狙いがある。

欧州委は今後、加盟候補国について、EUの研究開発や産業協力、EU単一市場への参加拡大が可能な分野を特定する方針で、具体例として、製品の適合性評価に関する協定について、必要な規制整合が達成され次第、締結を進めるべきとしている。このほか、段階的統合を進めるべき分野として、エネルギー、運輸、デジタルなどのEUとの接続や防衛産業を挙げている。

また、欧州委は、加盟交渉が進むモンテネグロ、アルバニア、モルドバ、ウクライナを対象に加盟交渉の今後の道筋を示す行程表を発表することを明らかにした。行程表は、今後の交渉の進捗を予断するものではないが、加盟候補国が取り組むべき法整備や改革の優先順位や交渉の進め方を明確にするものだ。

一方でEUの受け入れ態勢については、欧州委は、政治的ハードルが非常に高いEU条約の改正をせずとも、EU拡大への対応は可能との姿勢を示した。またウクライナについては(2026年9月9日付地域・分析レポート参照)、加盟に伴うEU農業市場への影響を抑えるため、農業部門の規模や高い生産性を踏まえ、農業補助金や一部農産品のEU市場へのアクセスを大幅に制限する特別措置を検討する必要性に言及した。

(吉沼啓介)

(EU、ウクライナ、モンテネグロ、アルバニア、モルドバ)

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