カナダ、サプライチェーン上の労働搾取防止に向けた人権DD制度に関する意見募集結果を公表

(カナダ)

調査部米州課

2026年10月15日

カナダ雇用・社会開発省は10月8日、サプライチェーン上の労働搾取を防止するため、企業に人権デューディリジェンス(DD)を義務付ける制度と、関連する民事責任の導入可能性について、意見募集の結果を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(注)。カナダ政府は、海外で事業を行うカナダ企業に対し、自社の事業やサプライチェーンにおける基本的労働権の侵害リスクを特定し、予防・是正するよう求める制度を検討している。

適用範囲について、労働団体や人権擁護団体などは、基本的労働権を対象とし、幅広い企業やサプライチェーンに制度を適用することをおおむね支持した。一方、企業や業界関係者は、導入当初は強制労働と児童労働、大企業、サプライチェーンの上流部分などに対象を絞った制度を支持する傾向が見られた。ただし、対象とする企業や活動、義務の履行方法などをリスクに応じて調整する考え方には、幅広い支持が示された。特に、中小企業にも適用する場合、企業規模に応じて義務を設定し、制度を段階的に導入すべきとの意見が多く見られた。

また、既存のDD制度との重複を減らし、企業が法令を順守しやすいよう、国際的な基準と整合した政府ガイダンスの策定を求める意見も寄せられた。具体的には、現在、連邦議会で審議中の「強制労働産品の輸入禁止を強化する法案(Bill C-35)」(2026年10月13日記事参照)で提案されている、強制労働産品の輸入禁止制度と定義や証拠基準などを整合させ、両制度が相互に補完し合う仕組みの導入が求められた。

民事責任について、労働団体や人権擁護団体などは、被害者が民事訴訟を提起できる制度は、実効的な救済へのアクセスと企業の説明責任を確保する上で不可欠だと主張した。一方、企業や業界関係者は、法的不確実性や訴訟リスク、損害との因果関係のほか、企業が合理的に管理できる範囲を超えた被害について責任を負うことに懸念を示した。その上で、多くの企業・団体からは、企業が適切なDDを実施したことを根拠として抗弁できる余地を設けるなど、明確な基準に基づく慎重かつ均衡の取れた制度の導入が求められた。

カナダは2024年にサプライチェーン法に基づき、政府機関や企業に対し、サプライチェーン上の強制労働や児童労働のリスクへの対応状況の報告(情報開示)を義務付けたが、その一方、人権・労働DDの実施(例えばリスクの特定、予防・軽減・是正など)そのものを企業に包括的に義務付ける法律は、現時点で制定されていない。カナダ政府は、今回の意見募集を踏まえ、今後の政策・法制度の在り方や対象範囲、執行方法を引き続き検討する。

(注)意見募集は、強制労働産品の輸入規制強化に向けた意見募集(2026年10月13日記事参照)と同時に実施した。関連情報は、調査レポート「『サプライチェーンと人権』に関する法制化動向(2026年3月)」のカナダ(26ページ)参照。

(木村勇翔)

(カナダ)

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