欧州委、イノベーション法案を発表、R&D公共調達と知財金融の共通ルール整備へ
(EU)
ブリュッセル発
2026年09月24日
欧州委員会は9月9日、革新的技術の開発や商用化、またそうした技術を持つ企業のスケールアップを容易にする投資環境を整備する欧州イノベーション法案を発表した(プレスリリース
)。法案は、行政機関が研究開発を発注するR&D公共調達を通じたイノベーション投資を促進するとともに、スタートアップ企業などが保有する知的財産(知財)を活用した資金調達を容易にするため、EU共通のルールや評価枠組みを整備する。
EUでは初期研究に強みを持つ一方、研究成果の商用化や企業のスケールアップ段階における資金調達が課題となっている。また、欧州委によると、EUの公共調達に占めるR&D公共調達の割合は0.6%にとどまり、米国(3.5%)や韓国(5%)を大きく下回っている。
そこで法案はまず、大学、スタートアップ、スケールアップ、大企業などあらゆる形態の事業者が参加可能なR&D公共調達手続きを規定する。具体的には、発注機関に対し、評価基準を最低価格方式ではなく価格と品質を総合的に評価する「最適価格品質比(BPQR)」とすること、特定の技術ではなく機能や性能などに基づく調達仕様書にすること、受注事業者による知的財産権の保有を認めることなどを義務付ける。
また法案は、同日に発表された公共調達法案(2026年9月15日記事参照)同様に、「欧州優遇(Europe preference)」を明確に打ち出す。R&D公共調達に参加可能な事業者は、原則としてEU企業に限定される。域外国にもR&D公共調達へのアクセスを認めるものの、欧州委は現時点で欧州経済領域(EEA)加盟国と西バルカン諸国に限られるとしている。
加えて法案は、EU知的財産庁(EUIPO)の下に、EU域内の研究機関や企業などを対象とした知財活用支援拠点となるコンピテンス・センターを設置する。その上で、金融機関による知財を担保とした融資を後押しするため、知財の価値評価に関する任意のEU共通枠組みを策定する。また、知財の保有者と利用希望者を結び付けるデジタルプラットフォームを構築し、知財のライセンス供与や譲渡を促進する。さらに、知財資産の売買や譲渡を円滑化するため、知財の二次市場の活性化を支援する。
法案は今後、EU理事会(閣僚理事会)および欧州議会で審議される。
なお欧州委は同日、革新的技術の商用化を後押しするため、特定の条件下で既存規制を一時的に緩和して実証実験を行う「規制サンドボックス」について、EU共通の原則を定める勧告案も発表した。
(吉沼啓介)
(EU)
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