欧州委、公共調達規則案を発表、EU企業・製品優遇を制度化へ

(EU)

ブリュッセル発

2026年09月15日

欧州委員会は9月9日、公共調達におけるEU企業・製品の優遇を前面に打ち出す規則案を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。規則案は、公共調達をEUの戦略目標の実現に向けた投資手段として活用するとともに、手続きの簡素化を通じて発注機関および企業の事務負担の軽減を図るものだ。

EUと加盟国による公共調達市場は、EUのGDPの約15%に相当する年間約2兆6,000ユーロ規模に上る。このうち約6,000億ユーロ分が規則案の適用対象になると見込まれており、欧州委は、公共調達を活用し域内産業の競争力や経済安全保障の強化につなげたい考えだ。

規則案の中核となるのが、公共調達においてEU企業・製品を優先する「欧州優遇(Europe preference)」の導入だ。同規定に基づき、発注機関は入札参加をEU企業に限定したり、入札手続きの途中で非EU企業による応札を却下したりすることができる。調達対象の製品についても、EU製品に限定するほか、評価上の優遇措置を講じたり、入札案件の推定総額に占めるEU産の割合が50%未満の場合は当該応札を排除したりできる。

欧州優遇規定の適用は原則として任意となる。一方、同規定は欧州優遇に関する横断的枠組みとして位置付けられ、EU企業・製品を優遇する産業加速法案(2026年3月13日記事参照)、クラウド・AI開発法案(2026年6月9日記事参照)、重要医薬品法案(2026年5月29日記事参照)などの戦略分野では、分野別法により適用が義務化される。

同規定は、中国企業・製品への対応を念頭に置いた措置とみられる。他方、日本などのEUとの自由貿易協定(FTA)、WTO政府調達協定、関税同盟の締結国の企業・製品は、原則としてEU企業・製品と同等の扱いを受ける。

また規則案は、公共調達の過半で採用されている最低価格方式ではなく、価格と品質を総合的に評価する「最適価格品質比(BPQR)」の採用を原則義務付ける。発注機関は、総得点のうち最低でも3割以上(労働集約型では5割以上)を品質評価に配分しなければならない。評価項目には、公共調達の目的に応じて、環境・気候変動への配慮、イノベーション、強靭(きょうじん)性・安全保障などを含めることができる。

規則案は、公共調達手続きの簡素化も大きな柱としている。既存の公共調達関連3指令を一本化して置き換えるとともに、分野別法の関連規定を集約する。これにより、加盟国ごとの国内法化を必要とする指令ではなく、全加盟国に直接適用される規則として、公共調達ルールを一元化する。加えて、欧州委は加盟国と共同で、EU全域の公共調達を集約するデジタル・マーケットプレイスを設置する方針だ。ワンストップショップ化により、企業の公共調達市場へのアクセス向上を図る。

規則案は今後、EU理事会(閣僚理事会)および欧州議会で審議される。

(吉沼啓介)

(EU)

ビジネス短信 38c8f8d0603fc2cc