在EU米国商工会議所、EU競争力強化に向けた提言を発表

(米国、EU、アイルランド)

調査部米州課

2026年07月01日

在EU米国商工会議所(AmCham EU)は6月28日、7月1日からのアイルランドのEU理事会(閣僚理事会)議長国(注1)就任に合わせ、EUの競争力強化に向けた提言を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(2026年6月4日記事参照)。

提言は、ウクライナ問題も含め18の政策分野から成り、近年のEUの環境・デジタル政策に伴う規制累積への米国産業界の強い問題意識を反映した内容となる。EU経済がより強靭(きょうじん、レジリエント)に競争力を維持するためには、企業が成長しイノベーションを創出できる環境を整えることが不可欠だとし、規制簡素化、単一市場強化、開放的な投資環境の維持を訴えた。規制に関しては、過剰な規制が重複し企業負担となっているとして、新規規制導入の抑制や報告義務の簡素化を求めた。また、規制に対し企業の予見性や実現性の確保が必要と指摘した。特に産業界から運用見直しや負担軽減を求める圧力が強まっている企業持続可能性報告指令(CSRD、注2)については、データ項目数の削減による負担軽減を求めた。ほかにも、EU炭素国境調整メカニズム(CBAM、注3)に対して、同制度が実務上運用可能かつ執行可能であるかを確認し、さらに将来の適用拡大にあたっては、産業界と連携した包括レビューを実施し、その結果を将来の決定に反映させることや、十分な準備期間を取ることなどを提言した。

EUで議論が進む「欧州優先」政策に対し、(企業の国籍ではなく)雇用や研究開発投資など欧州内での付加価値創出を評価するべきとした。また、信頼国との協力による供給網多様化を重視しており、単純な内製化ではなく「選択的な開放」を訴えた。

デジタル・データ政策では、クラウド・人工知能(AI)開発法、サイバーセキュリティー法改正、デジタルマーケット法などEUの各種デジタル規制において、米国テック企業が欧州市場から締め出されないよう4ページを割いて提言している、その中で、予測可能で調和のとれたデジタル単一市場構築に向けて、加盟国間での一貫した規則と実施体制の確立や国際標準との整合性確保を訴えている。

こうした提言の背景には、米国企業の欧州市場での存在感の大きさがある。AmCham EUによれば、欧州における米国の直接投資残高は約3兆5,000万ユーロ(2024年)で、約460万人(2024年)の雇用を創出、米国企業によるR&D投資額は372億ユーロ(2023年)にのぼる。とりわけ議長国となるアイルランドは、税制やビジネス環境を背景に米国企業(GAFAMや大手製薬など)972社が法人を設立、24万5,000人の雇用を創出する「米国投資の最大の受益国の1つ」であり、米EU経済関係の結節点となっている。

(注1)EU議長国は半年間の任期で各加盟国が輪番制で担当し、EU理事会(閣僚理事会)の各種会合などの日程調整と議事進行のほか、他のEU諸機関との調整役などの機能を担う。

(注2)2023年に発効したEU指令で、企業に対し環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する情報開示を義務付けるもの。段階的に対象企業を拡大し、EU域内企業に加え一定の条件を満たす域外企業にも適用される。開示内容は欧州持続可能性報告基準(ESRS)に基づく(2025年12月16日記事参照)。

(注3)EUが導入を進める炭素排出に基づく輸入調整制度。鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、水素、電力などを対象に、輸入品の炭素含有量に応じた負担を課すことで、EU域内産業との競争条件の公平化(カーボンリーケージ対策)を目的とする。202310月からの移行期間は2025年末で終了、20261月から本格適用が開始し、報告義務だけではなく2026年の排出分から金銭的な負担が生じる(2025年12月19日記事参照)。

(岩井晴美)

(米国、EU、アイルランド)

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