初の3カ国でのUSMCA見直し会合実施、米国は延長に同意せず
(米国、メキシコ、カナダ)
ニューヨーク発
2026年07月02日
米国通商代表部(USTR)は7月1日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の共同見直しにおいて、USMCAの延長に同意しなかったとするジェミソン・グリア代表の声明
を発表した。これにより、USMCAに参加する米国、メキシコ、カナダは、見直し協議を継続することになる。
2020年7月1日に発効したUSMCAは、条文上、発効から16年後に失効すると定められている。ただし、発効6年後に見直し会合を実施し、3カ国が延長に合意すれば、失効期限は合意時点から16年後に延長される。USMCAに参加する3カ国は、2026年7月1日に、初めての見直し会合を実施した。
声明によれば、米国、メキシコ、カナダの3カ国はオンラインで見直し会合を開催したが、米国は現在の形態でのUSMCAの更新に同意しなかった。USMCAの条文は、延長には3カ国での合意が必要だと定めている。今回延長に合意できなかったため、3カ国は条文に従い、今後も見直しを継続する。合意に至らない場合、USMCAは条文に従い2036年に失効する。
USTRの声明では、米国は、USMCAが抱える欠点、およびメキシコとカナダとの貿易赤字に対処するため協議を継続すると表明した(注1)。なお、米国とメキシコとの2国間の3回目の公式協議は7月20日の週に予定されている(注2)。一方で、米国とカナダは非公式協議にとどまり、正式な2国間交渉に関する発表はまだない。
米国通商専門誌「インサイドUSトレード」(7月1日)によれば、米国の政府高官は見直し会合後、3カ国がUSMCAの交渉で自動車の原産地規則の厳格化に合意したと指摘した(注3)。さらに、「自動車分野以外の工業製品についても、同様の厳格な規則を設ける必要がある」と述べ、メキシコも原産地規則の強化に関心を示していると説明した。具体的には、原産地規則に一定割合以上の米国原産品の使用を求めるルールを協議しているという。
北米に進出している多くの日系企業は、USMCAの特恵関税(無税)の活用や米国の低い関税率を前提にサプライチェーンを構築している。特に米国による追加関税が常態化する中では、USMCAの特恵措置を利用できるかどうかが、企業経営上の重要課題になっている。米国の追加関税措置の中には、USMCAの原産地規則を満たすことにより、適用対象外となるものがあるためだ(注4)。実際、米国のメキシコ・カナダからの輸入に対するUSMCAの利用率は、米国による相互関税が発表される直前の2025年3月から急拡大し、80~90%程度で推移している(添付資料図1、2参照)。ドナルド・トランプ大統領はUSMCAからの脱退も示唆しており(注5)、日本企業のビジネスにも影響を与えるUSMCAの行方は注視する必要がある。
(注1)USTRが指摘するUSMCAの課題やUSTRのUSMCA見直しに関する方針については、2026年2月20日付地域・分析レポート参照。
(注2)メキシコとの2回目の協議については、2026年6月22日記事参照。
(注3)米国とメキシコの1回目の公式2国間協議では、USTRが完成車の域内原産割合(RVC)を75%から82%へ引き上げ、そのうち米国原産割合を50%とするよう提案した、と報じられている(「ロイター」5月29日)。なお、この米国原産割合の引き上げは、労働付加価値割合(LVC)の引き上げを意味するとの指摘もある。現在のUSMCAの原産地規則の詳細については、2019年5月8日付地域・分析レポート参照。
(注4)相互関税や1974年通商法122条に基づく追加関税措置は、USMCAの原産地規則を満たすことで対象外となる規定が設けられた(2026年2月24日記事参照)。またUSTRが、強制労働を使用して生産された産品の輸入禁止措置をめぐって、同通商法301条に基づいて提案している追加関税措置もUSMCAの原産地規則を満たすことで対象外としている(2026年6月3日記事参照)。そのほか、1962年通商拡大法232条に基づく自動車・同部品への追加関税においては、USMCAの原産地規則を満たす場合、完成車に対しては非米国産部品の価額に対してのみ追加関税を課し、部品については追加関税を課していない(2025年4月3日記事参照)。
(注5)見直しのスケジュールにかかわらず、書面による通知を提出することで、6カ月後に脱退できる。
(赤平大寿)
(米国、メキシコ、カナダ)
ビジネス短信 611ba6a490120b1f





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