EUの産業加速法案や英国製電気自動車に対する関税に関し英国自動車業界団体が警鐘
(英国、EU)
ロンドン発
2026年07月07日
英国自動車製造者販売者協会(SMMT)のマイク・ホーズ会長は6月30日、ロンドンで開催された「SMMT国際自動車サミット」で講演し、英国の自動車業界はコストの高騰、世界的な保護主義、投資撤退リスクを背景に緊急の対策が必要だと述べた。同日発表されたSMMTの「第2回英国自動車ビジネスリーダー・バロメーター」(調査、注)
の結果に基づき、ゼロエミッション車(ZEV)の販売割合義務付け(ZEVマンデート、2025年4月15日記事参照)の改革、英国とEU間の公正な貿易の確保、エネルギーコスト・事業コストの削減という3つの課題を指摘した。
中でも「最も差し迫った懸念」はZEVマンデートであり、調査に回答した英国の自動車業界企業経営者全員が、英国は2030年のZEV目標達成に必要なペースより遅れていると回答。2027年1月以降、BEV(バッテリー式電気自動車)の乗用車販売全体に占める比率の年間目標が乗用車は38%、バンは34%に、2028年にはさらに52%と46%へと引き上げられるが、現在のBEV販売比率は、乗用車で23.9%、バンで9.5%と、需要と目標との乖離(かいり)が大きいと強調した。
また、EUが提案した産業加速法案(IAA、2026年3月13日記事参照)が実施された場合、「EU内組み立て(assembled in the EU)」として英国製品への適用除外をEU側が認めない限り、英国の自動車業界は最大の販売先である欧州市場の大部分で競争力を失いかねないと警鐘を鳴らした。さらに、EU離脱後のEU・英国間の通商・協力協定(TCA)での原産地規則の緩和措置(2023年12月22日記事参照)が終了する2027年1月以降、英国製のBEVやプラグインハイブリッド車などの約70%に対し、10%の関税が課されるという。解決策がなかった場合、推計で電気自動車(EV)業界は2027年単年で約14億ポンド(約3,010億円、1ポンド=約215円)の関税負担増に直面し、重要モデルの多くが競争力を失い、EU・英国間の同モデル貿易額の164億ポンドが危機にさらされると指摘した。また、コストの高騰については、回答者の93.5%は過去1年間で人件費が上昇した、84.8%は生産に必要な投入コストが上昇したと回答した。英国のエネルギーコストは欧州で最も高い水準にあり、英国産業競争力強化スキーム(BICS、2026年4月22日記事参照)が適用されたとしても、依然としてEU平均価格を約60%上回るとみられ、さらなるエネルギーコスト対策を求めている。
(注)2026年5月1日~6月2日に実施。英国の完成車メーカー、サプライヤー、小売り・流通などの自動車関連事業者の経営者50人が回答。回答企業の総売上高は940億ポンド、総従業員数は11万3,000人に上り、英国の自動車生産の98.4%を占める。
(森詩織)
(英国、EU)
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