米USTR、USMCAの自動車貿易報告書を発表、見直しを通じて原産地規則を強化する方針示す
(米国、メキシコ、カナダ)
ニューヨーク発
2026年07月09日
米国通商代表部(USTR)は7月1日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の自動車物品貿易に関する報告書
を連邦議会に提出した。米国の「USMCA実施法」はUSTRに対して2年ごとに、USMCAの自動車物品貿易の運用状況の議会への報告を義務付けている。今回は2024年に続いて(2024年7月3日記事参照)、3回目の報告となる(注1)。
冒頭で、自動車の原産地規則の緩和措置である代替経過措置(ASR、注2)のほとんどが2025年に失効したことに触れ、自動車メーカーは「原産地規則の完全履行に移行した」と記した。報告書によれば、カナダおよびメキシコから米国に輸入された自動車のうち、USMCAの原産地規則を満たした割合は、2020年のUSMCA発効以降で最低だった2023年の91.8%から2025年に94.7%に上昇した。自動車部品においても、62.0%から70.9%に上昇した。
一方で、メキシコに対する自動車・トラック・部品の貿易赤字額は、2019年の919億ドルから2025年の1,316億ドルに拡大したと課題視した(注3)。さらに、メキシコおよびカナダからの輸入に含まれる、米国産部品の減少と中国産部品の増加も課題視した。USTRの分析によると、メキシコから輸入する輸送機器に占める米国の付加価値の割合は、2017年の23.1%から2024年(注4)に18.3%へ低下した半面、中国による付加価値は4.5%から7.1%に、メキシコによる付加価値は50.9%から57.2%に上昇した。カナダからの輸送機器輸入においても、米国の付加価値の割合は26.3%から23.9%に低下した一方、中国は3.3%から4.2%に、カナダは49.5%から52.7%に上昇したと指摘した。
USMCAの見直しについては(注5)、その目的として、(1)自動車の原産地規則を強化し米国および北米産部品のさらなる利用促進、(2)非市場経済国がもたらす北米自動車サプライチェーンに対するリスク軽減、(3)自動車原産地規則の合理化・簡素化による、中小規模サプライヤーのUSMCA利用促進、を挙げた。USMCAの紛争解決パネルで争っていた主要部品(コアまたはスーパーコア)の域内原産割合(RVC)の解釈に関する最終報告については(2023年1月13日記事参照)、これまで同様「まだ合意に至っていない」と記した上で、USMCA見直しを通じて自動車の原産地規則の改正を目指す方針を示した。なお、報告書発表と同日の7月1日にUSMCAの見直し会合が行われたが、USTRは、USMCAが抱える欠点やメキシコとカナダとの貿易赤字に対処する必要があるとして、USMCAの延長に合意しなかった(2026年7月2日記事参照)。USTRは、自動車のRVCを75%から82%へ引き上げ、そのうち米国原産割合を50%とするよう提案しているとされる(注6)。
報告書では最後に、「USMCAは、米国および北米の自動車産業に引き続き大きなプラスの経済効果をもたらしている」と一定の評価をしつつも、レガシー半導体、重要鉱物、永久磁石のサプライチェーンにおける混乱といった外部要因により、「主要な中間財の第三国への依存が依然として続いている」「中国の過剰生産能力と相まって、米国および北米の自動車産業が直面するリスクが浮き彫りになった」とし、USMCAの自動車の原産地規則を強化し、第三国への過度な依存を軽減する姿勢をあらためて示した。
(注1)USTRは報告書作成に向け、2025年12月からパブリックコメントを募集
していた。
(注2)USMCAには、発効から原則5年間、自動車生産者が輸入国からの承認を得ることで、一部の車種に対して域内原産割合が62.5%に緩和されるといった経過措置がある。
(注3)2024年の赤字額は、1,382億ドルと2025年よりも大きい。報告書では、2025年に減少した理由として、トランプ政権が自動車などに課した1962年通商拡大法232条による追加関税の効果を挙げている。自動車などに対する232条関税の詳細は、ジェトロのウェブサイト参照
(661KB)。
(注4)2024年が入手可能な最新の値。
(注5)2020年7月1日に発効したUSMCAは、条文上、発効から16年後に失効すると定められている。ただし、発効6年後に見直し会合を実施し、3カ国が延長に合意すれば、失効期限は合意時点から16年後に延長される。延長に合意できなければ、3カ国は、毎年、見直しを継続する。合意できない状態が続けば、USMCAは条文に従い2036年に失効する。
(注6)そのほか、原産地規則に中国で生産された製品の使用を制限する規則を含める提案をするのではないかともいわれている。USTRのUSMCA見直しに関する方針は、2026年2月20日付地域・分析レポート参照。
(赤平大寿)
(米国、メキシコ、カナダ)
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