「World Hydrogen Summit 2026」で水素需要創出巡り議論
(EU、オランダ)
アムステルダム発
2026年06月18日
世界最大級の水素関連展示会「WORLD HYDROGEN SUMMIT&EXHIBITION 2026」が5月19~21日、オランダ・ロッテルダムで開催された(2026年6月4日記事参照)。エネルギー安全保障の観点から注目が高まる水素を巡って、政府および産業界の間で水素市場の課題である需要創出などの議論が行われた。
基調講演で欧州委員会エネルギー総局の上級顧問は冒頭、中東情勢の影響によりEUの化石燃料輸入コストは約250億ユーロ以上増加しており(2026年4月17日記事参照)、この追加額はEUがこれまで水素分野に投じてきた公的資金総額を上回ると強調した。化石燃料依存が続く限り同様のリスクがあるとし、エネルギー安全保障の観点から、水素を含めた再生可能エネルギー(再エネ)の促進策を紹介。一例として、水素プラットフォーム(注1)の第1ラウンドでは、265件の供給案件に対し、10加盟国から45件のオフテイク案件が登録され、供給案件の87%が少なくとも1件、半数が3件以上の関心表明を受けたことが紹介された。
再エネ指令改正法(2023年9月20日記事参照)に基づく水素政策の実装に向けたセッションでは、ブルームバークNEFの水素アナリストが、国内法化期限から1年が経過した現在も、RFNBO(注2)目標を輸送部門および/または産業部門において国内法化した加盟国は13にとどまると指摘した(注3)。輸送部門ではEU目標を上回る国もあるが、多くの加盟国で産業部門の目標が設定されていない現状を紹介した。オランダ経済・気候政策省の気候・エネルギー総局長は、産業部門における最終消費者への義務付けの難しさに加え、グリーン水素のコスト競争力不足や価格転嫁の困難さを指摘した。さらに、2030年以降の目標が不明確な中で、加盟国ごとに制度設計が分かれることは、単一市場の障壁となり得るとして、EUレベルでの明確化を求めた。ドイツ連邦経済・エネルギー省の水素・ガスインフラ局副局長は、企業は2030年までの目標では投資判断を行えないことから、輸送部門について2040年までのRFNBO目標を設定し、当初の8%から10%へ引き上げた上で法制化した経緯を説明。産業部門に関しては、「EU目標は極めて達成が難しいという現実を認識する必要がある」とし、補助金や値差支援などの支援策を通じ対応していく考えを示した。ブルームバークNEFは、2040年に年間約340万トンのグリーン水素需要が創出されると見込む一方、これを国内供給で賄えるのはポルトガルとデンマークに限られると指摘。このため、域内生産・需要拡大の支援策と輸入先とのパートナーシップの構築が必要とした。
(注1)域内市場で水素需給の透明性を向上させ、供給事業者とオフテイカー(引き取り手)のマッチングを支援する仕組み。
(注2)グリーン水素を主体とする非バイオ由来の再生可能燃料。
(注3)ラトビア、スロベニア、ハンガリー、デンマーク、チェコ、スロバキア、フィンランド、リトアニア、ルーマニア、オランダ、イタリア、エストニア、ドイツ。うち産業部門も国内法化に含めたのはスロベニア、チェコ、スロバキア、リトアニア、ルーマニア、イタリアの6カ国。
(梅田健太郎、薮中愛子)
(EU、オランダ)
ビジネス短信 f04c05c4f5306926





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