アルゼンチン、CPTPP加入を申請

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2026年06月09日

アルゼンチン政府は6月3日、日本を含む12カ国が加入する「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)」への加入を申請した。パブロ・キルノ外相は、パリで開催されたOECD閣僚会合にて、寄託国であるニュージーランドのトッド・マックレイ農業・林業・貿易投資相に、加入を要請する書簡を手渡したと自身の公式X(旧Twitter)で伝えた。また「(CPTPPは)世界でも特に包括的かつ先進的でダイナミズムに富む通商枠組みの1つ」だとし、「市場アクセス、貿易規律、サービスおよび投資の各分野において、国際的にも最先端かつ高い競争力を有する基準を備えている。アルゼンチンは、信頼されるパートナーとしての地位を着実に回復しつつあり、繁栄を実現していく」と述べた。

6月3日付現地紙「ラ・ナシオン(電子版)」と4日付現地紙「エル・クロニスタ(電子版)」は、現地の貿易関連アナリストらの見解をまとめ、アルゼンチンがCPTPPに加入するその利点とリスクを挙げている。最大の利点として挙げられていることは、複数の分野において輸出拡大の可能性が高まること。特に、農業、鉱業、エネルギーや食品に関連しない製造分野、ソフトウエア、バイオテクノロジー、映像産業を含むビジネスなどが恩恵を受ける分野だとしている。ただし、生産性が低く、関税保護への依存度が高い、あるいは構造的にコストが高い分野については競争圧力が高まることになるだろうとも指摘。それらは、繊維、履物、軽工業金属加工、消費財、アジア諸国と競合する製造業分野だとしている。

一方、最大のリスクとして挙げられているのは、政府の意図に反して協定が国会で承認、批准されないことだ(注1)。そうなった場合、国が信頼性を損なうだけでなく、「投資家にとっても不確実性が増すだけだ」と識者は警鐘を鳴らす。加えて、アルゼンチンが単独で加入交渉することが、加盟国全体での通商交渉実施を定めたメルコスールの決定事項に反する点もリスクとして挙げている(注2)。一方で、既に米国と相互貿易投資協定に署名も実施していることから、メルコスール内での交渉によっては不可能ではないと指摘する識者もいる(注3)。また、メルコスール加盟国でもあるウルグアイは、加盟国全体で交渉する決定事項は法的には有効でないと主張し、2022年に単独でCPTPP加入を申請した。2025年11月にメルボルンで開催されたCPTPP閣僚級会合においてウルグアイの加入手続きが開始されている(2025年11月27日記事参照)。申請から妥結までに数年かかるプロセスのため道のりは長いが、世界的に反自由化の動きが強まる中にあって、かつて保護主義国と批判されてきたアルゼンチンがCPTTPに加盟申請したことは、ある意味隔世の感がある。

(注1)現政権は少数与党であるため。

(注2)メルコスールは、対外共通関税を設定していることから、第三国・地域との通商交渉は、加盟国が一体となって行うことになっている。この方針は、アスンシオン条約やメルコスールとしての組織や機能を定める1994年締結のオウロ・プレット議定書にも盛り込まれている。さらに、2000年のCMC(共同市場理事会)決定第32号において、(1)第三国・地域との通商協定の交渉は4カ国が共同で行うこと、(2)2001年6月30日以降は、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)の枠組みで新たに関税を譲許する協定はメルコスールとしてのみ署名できること、を再確認している(2025年10月29日付地域・分析レポート参照)。

(注3)米国とアルゼンチンは2月5日、相互貿易協定に署名した(2026年2月9日記事参照)。米国は、1,000品目以上のアルゼンチン産品に対する相互関税を撤廃した。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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