米上院民主党議員、USMCA共同見直しで労働問題を最優先事項とするようUSTRに要請

(米国、カナダ、メキシコ)

ニューヨーク発

2026年05月25日

米国連邦議会上院のタミー・ボールドウィン議員(民主党、ウィスコンシン州)は5月20日、米国通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表に対し、7月に予定されている米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の共同見直しに関する書簡外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを提出したと発表した。書簡には同議員に加え、エリザベス・ウォレン議員(マサチューセッツ州)やチャック・シューマー上院少数党院内党務(ニューヨーク州)ら14人の民主党上院議員が署名した。米国労働者の問題を最優先事項とするよう求め、中国の影響力拡大への対処やメキシコの労働法執行の強化などを要請している。

書簡では、USMCAはその前身である北米自由貿易協定(NAFTA)から改善されたと評価した一方で、問題点として米企業のオフショアリングや、メキシコおよびカナダによるUSMCA労働章の義務の不履行、USMCAの優遇措置を利用した中国企業のメキシコ進出と米国市場アクセスへの懸念などを挙げた。

具体的には、次の7点について対処するよう求めた。

  1. 米国製造業のオフショアリング:オフショアリングはメキシコの低賃金が要因に行われることが多いため、USMCAにオフショアリングの禁止・抑制、メキシコの賃金・労働基準の引き上げ、北米での製造業の最低賃金基準の導入を盛り込む。
  2. メキシコ労働法の完全な執行:メキシコが独立労組の結成や団体交渉権を保障する義務を十分に果たしていない状況(注1)の是正を優先事項に据える。
  3. 事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM、注2)の強化:RRMはメキシコ労働者の賃上げや不当解雇の是正に効果があるが、運用の透明性やプロセスの遅延などが指摘されているため、より効率的な制度に改善する。
  4. 米国労働省国際労働局(ILAB)の資金確保:トランプ政権によるILABの国際労働者権利プログラム向けの予算削減に対し、USMCAの労働基準確保の観点から予算の回復が必要。
  5. 強制労働禁止措置の完全履行:強制労働を使用して生産された製品の輸入禁止を義務化するUSMCA第23.6条をより厳格に運用するため、3カ国間で執行データの公開や情報共有手続きを整備する。
  6. 中国企業のメキシコ進出への対策:USMCA発効後、中国からメキシコへの投資が倍増しており、中国企業がメキシコを介してUSMCAを利用することで米国の通商法を回避する制度の抜け穴を是正する。
  7. 中国の北米サプライチェーンへの浸食防止:特に自動車、航空宇宙、重機械分野でより強力な原産地規則(ROO)を設ける。

そのほか書簡では、USMCAの見直しは北米および世界貿易に多大な影響を与えると位置付け、見直しの過程と将来にわたり労働者が交渉に参加できるようにすることを求めている。ボールドウィン議員は、民主党上院議員団が3月に発出外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした、USMCA見直しで環境分野のルール強化を求める書簡にも加わっている(注3)。

(注1)USMCAの下、メキシコは労働者の団結権および団体交渉権を保護する労働法改革の実施に合意したものの、メキシコの合意履行を監視するために米国議会が設立した「独立メキシコ労働専門家委員会(IMLEB)」は2025年10月、メキシコがこれら労働関連の合意を履行していないとの報告書を提出している。

(注2)RRMは、事業所単位で労働権侵害の有無を判定する手続きで、違反が認められれば、USMCAによる特恵措置の停止などの罰則が適用され得る(2026年3月30日記事参照

(注3)見直し協議については、労働者保護に関する議論に加え、ROOの強化が日系企業に最も影響を与えるとみられる(2026年2月20日付地域・分析レポート2026年5月19日記事参照)。

(久峨喜美子)

(米国、カナダ、メキシコ)

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