米自動車7団体、USTRにUSMCAの3カ国間枠組み維持を要請
(米国、カナダ、メキシコ)
ニューヨーク発
2026年05月19日
米国の自動車関連7業界団体は5月7日、米通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表に対し、2026年7月に予定されている米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直しに際し、現行の3カ国間枠組みを維持するよう求める書簡を提出した。
署名したのは、オート・ドライブ・アメリカ
(ADA)、自動車イノベーション協会
(AAI)、全米国際自動車ディーラー協会
(AIADA)、全米自動車ディーラー協会
(NADA)、米国自動車政策評議会
(AAPC)、ゼロエミッション輸送協会
(ZETA)、米自動車部品工業会
(MEMA)の7団体。ADAはトヨタ自動車、ホンダ、現代自動車、BMWなど、米国内に生産拠点を持つ外資系メーカーを代表する。一方、AAPCはゼネラルモーターズ(GM)、フォード、ステランティスを代表する。また、ZETAはテスラやリビアンを創設メンバーとする電気自動車(EV)関連団体として知られる。各団体は異なる企業群を代表しており、利害が必ずしも一致しているわけではないが、今回の書簡には米国内で販売・生産を行う自動車関連企業の大半が賛同した。
書簡では、USMCAの成果や今後の可能性を根拠に、3カ国間枠組み維持の重要性を訴えた。具体的には、(1)部品が複数回国境を超えるサプライチェーンを同協定が支えており、競争力の維持や消費者負担の抑制につながっていること、(2)発効以来、19の新規生産施設の設置と3,350億ドルの投資が行われたこと、(3)自動車の原産地規則の段階的導入(注1)が2023年7月に完了したばかりで、いまだ初期段階にあること、(4)3カ国間枠組みが非市場経済体制による不公正な競争圧力への対抗手段となっていることを挙げた。その上で、「順守要件や認証ルールが大きく異なる複数の2国間協定へと分割すれば、不必要な複雑さや管理負担を招き、規制体制の分断やサプライチェーンの毀損につながる」と主張した。
米通商専門誌「インサイドUSトレード」によると、トランプ政権はUSMCAを2国間協定に置き換える可能性を示唆している(注2)。USMCAの3カ国による正式な共同レビューは2026年7月に予定されており、グリア代表はすでにメキシコ、カナダとの2カ国間での事前協議を開始している。
見直し協議では具体的な論点にも注目が集まる。ADAのローリー・ヘスリントン副代表は、ベトナムやタイが迂回輸出の拠点となる可能性があることをグリア代表は懸念していると指摘した。その上で、(1)迂回輸出対策として、中国、ベトナム、タイなどUSMCA非加盟国由来の部材を排除する措置、(2)EVや自動運転システム関連部品に対する個別の原産地規則の導入、などが論点となる可能性があるとの見方を示した(5月7日付、首都ワシントンでの筆者インタビュー)。
(注1)USMCAでは原産地規則に関し、2020年の発効時に66%、2021年に69%、2022年に72%、2023年以降に75%へ段階的に引き上げる猶予期間が設けられている(2022年8月5日記事参照)。
(注2)2017年に開始した北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を巡る論考によれば、「(経済的に)より力の強い当事立場の者にとっては、(弱い立場の相手と個別に交渉する)『分割統治』戦略が利益最大化につながる可能性がある」と指摘する一方、交渉参加国が増えるほど新たな価値創出の余地が広がる点も論じている(「ハーバード・ロースクール」2025年11月24日
)。
(大原典子)
(米国、カナダ、メキシコ)
ビジネス短信 69e2d02c0554cd19





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