フランス、レアアース戦略強化へ、洋上風力入札で調達先比率規定を導入
(フランス、EU、オーストラリア)
パリ発
2026年05月13日
フランス政府は5月5日、レアアース・永久磁石の供給網強化に向けた国家レジリエンス計画
(フランス語)を公表した。同計画は、環境負荷の低減と地域経済への貢献、雇用創出を両立しつつ、フランスおよび欧州におけるレアアース・永久磁石の生産体制の再構築を目指すもので、2025年9月に公表された重要鉱物の安定供給に関する包括戦略
(フランス語)の一環として位置付けられる。
今回の計画の柱は、永久磁石のバリューチェーン全体にわたる国内生産能力の強化、レアアースを含む鉱石原料の供給確保、さらに需要喚起によるフランス・欧州サプライチェーンの安定化にある。加えて、レアアースおよび永久磁石のリサイクル産業の国内展開を進め、循環型の産業構造を構築する方針だ。
政府は2030年までに、重希土類について世界需要の約10%(欧州需要の100%)、軽希土類について欧州需要の25%を賄う希土類酸化物の生産体制構築を目標に掲げる。また、欧州産業の需要の約1割に対応する希土類合金の供給や、洋上風力向けに100%リサイクル原料によるネオジム磁石(NdFeB磁石)の生産も視野に入れている。
具体的な政策措置としては、まず、希土類の採掘プロジェクトを対象に、政府がフランス経済にとって戦略的なプロジェクトに融資する戦略的プロジェクト保証(GPS)の適用条件を緩和し、国内企業の調達力強化を図る。また、重要鉱物を扱う商社との連携を通じて、重要鉱物全般の供給確保に向けた制度的枠組みの整備を進める。
さらに、グリーン産業への投資を支援する税額控除制度(C3IV)については、適用期限を2028年末まで延長するとともに、希土類関連プロジェクトの手続きを簡素化して自動車分野での活用も可能とする(2024年3月22日記事参照)。国家投資計画「フランス2030」では、重要鉱物分野の公募延長により、2027年までに新たに約10件のプロジェクトを支援する方針だ。
資金面では、政府系インフラ投資ファンドのインフラビア(Infravia)が、オーストラリアの鉱山開発・運営企業コアリチウム(Core Lithium)とフランスのレアアース精製企業カレスター(Carester)に初の投資を実施した(2025年3月24日記事参照)。さらに、洋上風力分野における永久磁石の調達先の多様化を進めるため、今後の入札において単一支配国からの調達比率を50%未満とする要件を導入するほか、欧州製永久磁石を25%以上使用する事業提案を求める方針だ。
制度面でも、電動モーターを「メード・イン・ヨーロッパ」と認定する際に構成部品である永久磁石の原産地を、欧州の産業加速法(Industrial Accelerator Act、2026年3月13日記事参照)や資源調達の強化を目指すリソースEU(REsourceEU、2025年12月15日記事参照)において考慮するよう求める。また、自動車分野では、希土類(特に重希土類)を使用しない部品の研究開発を促進するため、公的投資銀行(Bpifrance)による研究開発支援事業の次期公募に専用の支援枠を設ける。
このほか政府は、大手自動車企業に対し、国家投資計画「フランス2030」における自動車関連支援措置の応募条件として、永久磁石およびレアアースの調達先を多様化する計画の提出を義務付ける。サプライチェーンの強靱(きょうじん)化と産業主権の確立を同時に進める考えだ。
(山崎あき)
(フランス、EU、オーストラリア)
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