欧州委、エネルギー連結性強化プロジェクトに「H2Med」などを選定

(スペイン)

マドリード発

2026年04月24日

欧州委員会は4月9日、欧州大陸全体のエネルギー連結性の強化に向けた「共通利益プロジェクト(PCI)」および「相互利益プロジェクト(PMI)」の第2次リストをEU官報に掲載し、計235件の事業を正式に確定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(第1次リストは2023年11月30日記事参照)。

このうち100件は水素・電解装置関連事業で、イベリア半島からフランスを経て中欧の需要地につながる「南西部水素回廊」の関連案件も選定された。それらの中で特に注目されるものの1つがバルセロナ~マルセイユ間の海底パイプラインを含む「H2Med」だ(2025年3月27日付地域・分析レポート参照)。同案件に参画する送ガス系統運用者のエナガスは、同回廊を欧州のエネルギー転換における戦略的インフラと位置付け、第2次リストに選定されたことは許認可の迅速化やEU資金へのアクセスなど制度・資金面で追い風になると評価した。

スペインでは地域ごとに異なる水素実装モデルが鮮明になっている。

アンダルシア州では、ウエルバを中心に、豊富な再生可能エネルギー(再エネ)資源、港湾、化学産業基盤を生かした供給・輸出型の戦略が進む。中でも、モエベ(旧セプサ)は3月、アンダルシア・グリーン水素バレーの第1フェーズ「Onuba」プロジェクトとして生産能力300メガワット(MW)の水素製造プラントについての最終投資決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行ったことを公表した(2026年3月19日記事参照)。再生可能水素を原料・プロセスに用いたアンモニア、メタノール、持続可能な航空燃料(SAF)の製造・輸出を想定しており、同地域はスペインで最も事業化が先行する水素拠点の1つとなっている。

これに対し、バスク地方では、レプソル傘下のペトロノール製油所、ビルバオ港、鉄鋼、セメント、ガラスなどの産業集積を背景に、水素の利用側に重点を置く需要地密着型の戦略が特徴となる。バスク水素回廊(BH2C)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2023年7月26日記事参照)を軸に、高温熱プロセスの脱炭素化や関連機器の実装が進められているほか、エナガスはバスク地方で地下水素貯蔵の整備も計画している。研究機関と機器メーカーが集積し、開発から実装までを地域内で完結しやすい点も強みとされる。

北東部アラゴン州でも、アラゴン水素財団などを中心に、豊富な風力資源や物流結節機能を生かしたクラスター形成が進む。旗艦プロジェクト「カタリナ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」では、500MWの電解設備が計画されている。

ジェトロは3月、「欧州水素エネルギー会議(EHEC)2026」に合わせて日本企業ミッションを派遣(2026年4月9日記事参照)し、上記3地域をはじめとするスペインの複数の水素関連クラスター・企業と交流した。中東危機の緊迫化を受け、スペインでは再エネや電化を軸としたエネルギー転換の加速があらためて重視されており、水素の中長期的な位置付けもむしろ明確になっている。水素を巡る制度整備と地域実装が並行して進む中、日本企業にとっては地域ごとの産業構造や需要の違いを踏まえた参入戦略の見極めが重要となりそうだ。

写真 アンダルシア州(左)およびバスク地方(右)のセッション(ともにジェトロ撮影)

アンダルシア州(左)およびバスク地方(右)のセッション(ともにジェトロ撮影)

(古川祐、伊藤裕規子)

(スペイン)

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