BYD、タイで4車種を同時投入、EV市場攻勢を加速

(中国、タイ)

広州発

2026年04月06日

中国の大手電気自動車(EV)メーカーの比亜迪(BYD)は、タイで3月25日に開幕した「第47回バンコク国際モーターショー」(会期は4月5日まで)で、タイ市場向けに4つの新モデル、小型EV「ATTO 1」、コンパクト・スポーツ用多目的車(SUV)「ATTO 2」、プレミアムEVセダン「SEAL 6」、長航続プラグインハイブリッド車(PHEV)「SEALION 5 DM-i」を発表した。BYDがタイで同時に4車種を発表するのは初めて。

同社は単独ブランドとして最大規模の2,835平方メートルのブースを設け、高級ブランド「DENZA」を含め40台以上の新エネルギー車〔バッテリー式電気自動車(BEV)およびPHEV〕を展示すると同時に、今回発表された4車種にも搭載されている自社開発のブレードバッテリー(注1)や、PHEV向けに開発されたシャオユン(Xiaoyun)エンジン(注2)などを紹介した。「ATTO 1」は、42万9,900バーツ(約210万6,500円、1バーツ=約4.9円)からと、エントリー層にも手が届きやすい価格設定となっている。中国の自動車産業専門メディア「盖世汽車(Gasgoo)」の3月25日付の記事によると、BYDのアジア太平洋自動車販売部門ゼネラルマネージャーである劉雪亮氏は、今回発表された4車種の投入について、同社のタイ市場での事業拡大における重要なマイルストーンであると述べている。

写真 今回発表された「ATTO 1」(ジェトロ撮影)

今回発表された「ATTO 1」(ジェトロ撮影)

写真 ブレードバッテリーとシャオユン(Xiaoyun)エンジン(ジェトロ撮影)

ブレードバッテリーとシャオユン(Xiaoyun)エンジン(ジェトロ撮影)

中国メーカーが中国国内市場向けに展開する新エネルギー車では、大小複数のディスプレーが社内に配置され、タッチパネル操作や、動画視聴、カラオケ機能など、車内エンターテインメント性を重視したデザインが多く見られる。一方、本イベントに展示された中国メーカーの車両では、物理ボタンを残す構成が比較的多く、価格帯や故障リスクへの配慮などタイ市場のニーズに合わせた仕様調整がうかがえた。

会場を訪れていた来場者は、中国メーカーの製品について「以前は品質が悪いという印象だったが今は違う。この会場で人が集まっている場所を見れば分かる」と語った。会場では、数多くのEVを展示している中国系ブランドのブースに多くの人が集まっていた。

写真 今回発表された「BYD SEALION 5 DM-i」の車内の様子(ジェトロ撮影)

今回発表された「BYD SEALION 5 DM-i」の車内の様子(ジェトロ撮影)

BYDが3月28日に発表した年次報告書によると、同社の2025年の売上高は過去最高を達成した一方、純利益は4年ぶりの減益となった。中国国内市場における値下げ競争により利幅の縮小などが影響したとしている。

中国国内の価格競争が激化する中、BYDをはじめ中国メーカーは海外展開を強化している。タイにおける2025年の自動車の国内販売台数は前年比8.5%増の約62万台となる中、中国メーカーのシェアは前年(11.6%)から18.2%へ6.6ポイント上昇した。一方で、日本メーカーのシェアは、前年の76.7%から69.3%へ7.4ポイント低下している(2026年2月5日記事参照)。今回のBYDによる新車種の大規模投入を含む中国メーカーの動向が、今後のタイの自動車市場に与える影響に注視が必要だ。

写真 BYDのブース内の商談スペース(ジェトロ撮影)

BYDのブース内の商談スペース(ジェトロ撮影)

写真 BYDのタイ全土におけるショールーム176カ所を示した展示(ジェトロ撮影)

BYDのタイ全土におけるショールーム176カ所を示した展示(ジェトロ撮影)

(注1)ブレードバッテリーとは、同社が2020年3月に発表した独自開発のLFP電池。電池セルをモジュール化せずに、電池パックに直接接着・固定するため、限られたスペースに対してより多くのセルを搭載することができる(2024年12月18日付地域・分析レポート2026年3月13日記事参照)。

(注2)BYDがPHEV向けに開発した専用高効率内燃機関。エンジンを主に発電や補助動力として活用するDM‑i(Dual Mode‑intelligent)ハイブリッド技術の中核を成し、燃費性能や航続距離の向上を目的として設計されている。

(西村京子)

(中国、タイ)

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