中東情勢悪化が水供給や食糧確保にも影響
(中東、アフリカ、世界)
調査部中東アフリカ課
2026年03月25日
イスラエルと米国は2月28日、イランに対する攻撃を開始し、これに対しイランは中東諸国の米軍基地などへ反撃を行っている。中東情勢悪化により、国際的な物流の要衝であるホルムズ海峡の通航が停止状態(2026年3月4日記事参照)となった。
このような中、国連食糧農業機関(FAO)は3月19日、食糧に関する報告書「中東での衝突における世界的な食糧動向
」を発表した。同報告書では中東地域での武力衝突は、世界の食糧システムに脅威を与えていると指摘した。石油、ガス、肥料の貿易の要であるホルムズ海峡での混乱により、エネルギーや肥料・農業資材のコスト上昇を招いている。中東諸国は肥料輸出国もあり、尿素やアンモニア生産も多く、世界の尿素輸出量の約30~35%、アンモニア輸出量の約20~30%を占めるという。
また、乾燥地帯である中東において、生活に不可欠な水の供給システムが危機に陥る可能性もあると警告した。湾岸諸国やレバノン、パレスチナ自治区などにおいて、水は戦略的物資であり、同時に攻撃の標的にもなり得るという。クウェート、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などの湾岸諸国は、生活用水および農業用水を海水淡水化に依存しており、稼働停止の場合は危機につながる。
各種メディアによると、イランやクウェートでの海水淡水化施設に被害が出たとの報道もある。
さらに、報告書によると、中東情勢悪化が水関連施設稼働にも影響を与えるという。例えば、給水ネットワークや灌漑(かんがい)システムへの被害も報告されており、農業や国内自給率に影響する恐れがあるという。排水処理施設が停止した場合、農業用水の安全性が失われるほか、公衆衛生上の危機にもつながる。
中東の湾岸諸国6カ国では食糧供給の60~90%を輸⼊に頼っており、各国政府では数カ月分の備蓄があるとするも、輸送の混乱が長期化すると食品価格は上昇する可能性がある。特にバーレーンでは89%、カタールでは86%の食糧を輸入に依存している。湾岸諸国は世界の穀物輸入シェアも高く、特に米の輸入シェアは14%を占める。このほか、アフリカやアジアなどの食糧を輸入に依存する国においても、食品価格上昇につながる恐れがあるという。
各国のサプライチェーン安定化のためには、代替貿易ルート開発、農家への支援、食糧供給に脆弱(ぜいじゃく)な国への支援などの措置が必要だとした。短期的にはホルムズ海峡再開に向けた外交的努力が必要であり、長期的には各国での農産物や肥料の生産増加、再生可能エネルギーの拡大なども必要だと指摘した。
なお、国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、アフリカでも肥料をホルムズ海峡に依存している国もある(2026年3月12日記事参照)。また、アフリカ連合は中東情勢悪化がアフリカ経済に影響を及ぼすとしている(2026年3月16日記事参照)。
現地情勢については、特集「イスラエル・米国とイランの衝突に関する中東情勢、各国の反応」も参照。
(井澤壌士)
(中東、アフリカ、世界)
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