欧州委、2030年代初頭のSMR稼働と域内エコシステムの構築に向けた原子力戦略を発表
(EU)
ブリュッセル発
2026年03月18日
欧州委員会は3月10日、エネルギー政策パッケージ(2026年3月18日記事参照)の一環として、小型モジュール炉(SMR)の開発と展開を支援する戦略を発表した(プレスリリース
)。EU域内のSMR初号機を2030年代初頭までに稼働させることを目標に、EUと加盟国が一体となってSMRの域内エコシステムの構築と早期商業化を狙う。
今回の戦略がまず掲げるのは、域内製技術によるSMR開発と域内サプライチェーンの構築だ。輸入に依存する化石燃料からの脱却策としてSMRを重視した結果、新たな域外依存に陥ることを避けるとともに、競争力強化に向け域内産業を支援すべく、自前でのSMR、特に先進モジュール炉(AMR)の開発と製造を目指す。そこで戦略は、すべてのSMR事業に加盟国間での協業と産業加速法案(IAA、2026年3月13日記事参照)に沿った現地調達要件を求めることを提案する。また、SMRの設計やモジュール部品の共通化、産業標準化、規制当局間の認可協力を進めることで、域内での初期投資を抑えた短期間でのSMRの展開を実現すべきと提唱する。欧州委は、SMR開発を欧州共通の産業プロジェクトとすべきとしており、EUの産業協力の成功モデルとされる航空機大手エアバスのような欧州の一大産業に育てたいとの意向があるとみられる。
なお欧州委は、民間投資を呼び込むべく、リスク軽減スキームを開発するとしており、手始めに域内の革新的な原子力技術の展開支援として、2028年までに2億ユーロの追加供出を検討する。
原子力軽視は「戦略的な誤り」、EUの原子力回帰が鮮明に
欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は戦略の発表当日、フランス・パリで開催された原子力エネルギーサミットで講演し、1990年以降の域内のエネルギーミックスに占める原子力の割合の大幅な引き下げは、「戦略的な誤り」だったと発言した(2026年3月16日記事参照)。背景にあるのは、EUを取り巻く地政学的な環境の変化、エネルギー価格の高騰に伴う域内産業の競争力停滞、そしてデータセンターの拡大に伴う今後の電力需要の増加予測だ。こうした中で欧州委は、再生可能エネルギーを補完するエネルギーとして、低炭素かつ域内生産と安定供給が可能な原子力を再評価し、SMR開発を積極的に推進する方針を明確にしている。
(吉沼啓介)
(EU)
ビジネス短信 3305cabfba79b1c7






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