EUが原子力を再評価する一方で、ドイツ首相は脱原発の決定は不可逆と強調
(ドイツ、EU)
ベルリン発
2026年03月16日
第2回「原子力エネルギー・サミット」(2024年4月2日記事参照)が3月10日にフランス・パリで開催された。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は同サミットで、「1990年には欧州の電力の3分の1が原子力に由来していたが、現在ではわずか15%程度に過ぎない。原子力の割合が減少したのは意図的な選択だったが、信頼性が高く、手頃な価格で、低排出の電力源に背を向けたことは、欧州にとって戦略的な誤りだった」と発言した。
同日、チェコのアンドレイ・バビシュ首相のベルリン来訪を受け共同記者会見に臨んだフリードリヒ・メルツ首相は、記者から、フォン・デア・ライエン委員長の発言がドイツにとってどのような意味を持つか問われ、同委員長の見解に個人的には同意するとコメントした。しかし、ドイツ政府として原子力発電の段階的廃止を決定しており、この決定を覆すことはできないと回答。「この決定は不可逆であり、残念だがこれが現実である」とコメントした。
同委員長の発言を受け、カーステン・シュナイダー環境・気候保護・自然保護・原子力安全相は同日、声明
を発表した。「(原子力エネルギーを推進するEUの)後進的な戦略の中核が、原子力発電所への新たな補助金であるということは、多くのことを物語っている」と述べ、「15年前に達成された原子力に関する合意はドイツにとって良い結果をもたらした。その合意を軽率に危険にさらすべきではない」とEUの計画(注)を批判した。
政府内でも分かれる意見、専門家は原発回帰を実質不可と指摘
これらの発言を受け、ドイツ経済誌「ビルトシャフツ・ボッヒェ」(3月10日)は、ドイツ政府内では、EUの計画に対する反応からも明らかなように、原子力政策をめぐって意見が対立していると報じた。
ドイツ公共放送ARD(3月11日)は、原子力発電所は24時間体制で電力を供給するため、もし日中に稼働させれば太陽光発電の出力を抑制する必要があり、原子力発電の代わりに日中に余剰となった太陽光発電の電力を夜間に持ち越すための蓄電技術のさらなる開発に注力すべきで、ドイツではもはや原子力発電所を電力網に合理的に統合することは実質的に不可能、とする専門家のコメントを紹介した。
(注)欧州委は同日、2030 年代初頭までに欧州初となる小型モジュール炉(SMR)の実用化を目指す「SMR戦略」を発表(プレスリリース
)。クリーン産業ディール国家補助枠組み(CISAF、2025年6月30日記事参照)などの公的資金を活用し、SMRのバリューチェーン構築に向けた資金調達を促進するとした。
(中山裕貴)
(ドイツ、EU)
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