タイ政府、米国相互関税の停止を評価も、新たな措置を警戒
(タイ、米国)
バンコク発
2026年03月02日
タイ政府は2月24日、米国の連邦最高裁判所が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税を無効と判断した(2026年2月24日記事参照)ことに対する声明
を発表した(注1)。閣議で議論を行い、影響評価および適切な対策を講じるよう、関係閣僚に指示した。
評価および今後の対策は、エクニティ・ニティタンプラパス副首相兼財務相とスパジー・スタンパン商務相、国家経済社会開発評議会(NESDC)が行う。ドナルド・トランプ米大統領が、最高裁判決を踏まえた相互関税の停止とともに、1974年通商法122条に基づく10%(注2)の追加関税を発表した(2026年2月24日記事参照)ことを受けて、エクニティ副首相は「(タイ製品にとって競争環境の改善となる」と述べた(「バンコク・ポスト」紙2月23日付)。
スパジー商務相は、今回の最高裁判決について、米国の「三権分立」の反映と評価した(「ネーション」紙2月21日付)。また、タイ産業界への影響を軽減するため、米国との貿易協議は継続する方針を示した。さらに、商務省傘下の貿易政策・戦略事務局(TPSO)は、最高裁判決後も、トランプ政権には「6つの通商上の措置」(注3)が残っていると分析し、新たな措置を警戒している(同紙同日付))。
産業界は「関税の累積」やインドとの競争などのリスクを指摘
タイ工業連盟(FTI)は、相互関税の停止を歓迎し、米やドリアン、マンゴスチンなど一部農産品が追加関税の対象外となったことを評価した(「バンコク・ポスト」紙2月21日付)。他方、エレクトロニクスや自動車部品などで、新たな10%の追加関税が、既存のアンチダンピング税などに上乗せされる「関税の累積」の可能性を懸念している。その他、タイ船荷主協会(TNSC)も、同様の懸念を示すとともに、米国の最高裁判決による判決を法の支配を示すと前向きに評価する一方、今回が「保護主義の終わり」ではないと警告している。
ビーラポン・プラーパ元通商代表(現民主党副党首)は、相互関税は無効となったものの、関税還付の権利が、タイ輸出者ではなく米国輸入者にある点を強調。タイ企業にとって、還付交渉は困難を伴うとの見方を示した(現地紙「ザ・スタンダード」2月21日付)。他方、貿易交渉は、米国トランプ政権が別の通商手段を有することから継続すべきとしつつ、英国が鉄鋼製品の個別除外を獲得した(2025年5月9日記事参照)ように、品目別除外を追求すべきと提言している。
カシコン銀行は、タイが競合国と類似の税率となることで関税の影響は限定的になるとしつつ、宝飾品など一部の分野では、インドがEUと1月に自由貿易協定(FTA)交渉に妥結(2026年2月2日記事参照)し、米国とも貿易合意
を結んだことで、タイの輸出競争力が損なわれるリスクを指摘(タイ国営放送「PBS」2月21日付)。欧米との貿易合意が必要となる中、新政権の発足が遅れれば貿易への悪影響が出ると分析している。
(注1)米国が7月31日に発表した大統領令(2025年8月1日記事参照)に基づき、一般税率(MFN税率)に上乗せされるかたちで、タイには19%が適用されていた。
(注2)トランプ氏は2月21日に自身のSNSで課徴金を15%に引き上げると記載したが、実施時期など詳細については不明。エクニティ副首相は関税率が一律15%になることを想定し、上記の発言に加えて、同率がタイの製造業・投資ハブとしての求心力を高めるとコメントしている。
(注3)1974年通商法122条、同203条、同301条、1962年通商拡大法232条、1930年通商法338条、IEEPAの非関税措置。
(藪恭兵)
(タイ、米国)
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