政府と業界のギャップを規格で埋める、SAEインターナショナルに聞く

(米国)

ニューヨーク発

2026年01月27日

SAEインターナショナル(以下SAE外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによる年次会合「政府/産業間ミーティング外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が12022日、米国ワシントンDCで開催された。SAEは自動車や航空宇宙分野などの国際基準を制定する米国の非営利団体(注1)。1905年に設立され、現在は世界で約20万人のモビリティ分野のエンジニアが在籍する。政府補助金の恒常的な利用はせず、ロビー活動も行っていない。政策当局からの照会に対しては、特定の利害によらない立場から情報提供を行う技術者集団だ。同会合会期中の121日、SAEのピーター・ドーティー副会長兼暫定最高執行責任者(COO)に話を聞いた。

写真 ピーター・ドーティー副社長兼暫定最高執行責任者(COO)(ジェトロ撮影)

ピーター・ドーティー副社長兼暫定最高執行責任者(COO)(ジェトロ撮影)

(問)標準規格を設定する意義は。

(答)製品の性能などに一定の基準を設けることで、異なるメーカーの製品に互換性を持たせることができ、生産効率や消費者の利便性が向上する点だ。SAEの標準規格の多くは業界からの自発的な提案をもとに策定されるが、規制や法律の制定・改正のため、政府から委託されるケースもある。

(問)トランプ政権下では、電動化推進の見直しなど、多くの自動車関連政策が変更された。SAEの活動にどう影響しているか。

(答)業界の事業戦略は政権よりも長いサイクルで動いているため、大きな変化はない。もともと、用途や地域特性に応じて、ガソリン車や電気自動車(EV)といった複数のプラットフォーム技術(注2)が併存するという前提をとっている。もっとも、トランプ政権の産業政策は、必ずしもEVを排除し、内燃機関車を推進しているわけではない。政府は(「大きく美しい1つの法案(OBBBA)法」において)バッテリー生産に対する税額控除(内国歳入法45X)を撤廃せず(2025年7月15日記事参照)、また(エンジン音がしない)EVの軍事利用に有用性を見出した。こうした点は現政権がEV技術そのものを否定していないことを示している。

(問)現在、トランプ政権が最も力を入れている技術分野は。

(答)現政権は自動運転(AV)分野の社会実装を加速させることに強い意欲を持っている。運輸省では、同分野へのリソースの配分を増やしており、州境を越えたAV車両の移動を実現させるなど、国家的な枠組みを構築しようとしている可能性がある(2025年4月30日記事参照、注3)。「道路交通の安全」という身近で重要な問題の解決という観点から、党派を問わずに取り組める課題だ。

(問)現在の米国において、技術の進化と制度、産業での対応における問題は何か。

(答)技術の進化の速さ、4年ごとの政策・規制の変更サイクル、企業や製造現場での対応に要する時間という3つの異なる時間軸の間にずれが生じている点だ。例えば中国では政府主導でこの3点の足並みをそろえることで開発を加速できる。そうした中、SAEでは用語の定義や性能基準を整備することで、政府と産業の間に立つ調整役を果たしたいと考えている。

(問)日系企業を含めた、ビジネスリーダーへのメッセージ。

(答)SAEの標準規格は、連邦政府の政策や規制、認証の土台となるものだ。混沌とした政策環境下だからこそ、さらに多くの日系企業が参加し、規格の策定と維持に携わってほしい。

(注1)自動運転レベルの国際基準(SAE J3016外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)などでも知られる。トヨタなどの日系自動車メーカーやIHIなど多くの日本企業も参加している。

(注2)ガソリン車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、バッテリー式電気自動車など。

(注3)現在公道におけるAV走行に関しては、各州が法規制を定めている(2026年1月19日 地域・分析レポート参照)。

(大原典子)

(米国)

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