COP30の最終合意文書、脱化石燃料には至らずも資金調達と持続可能燃料の利用促進で前進
(ブラジル)
調査部米州課
2025年12月04日
ブラジルのベレン市で開催されていた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)が11月22日、閉幕した。当初、11月10~21日までの開催が予定されていたが、会期を1日延長した。22日には、「ベレン・ポリティカル・パッケージ」が発表され、中でも特に関心の高い、気候変動対策に関する緩和策や資金に関わる包括的な内容を含む「グローバル・ムチラオ決定」が採択された。同決定には、いまだ、パリ協定の締約国196カ国からのNDC(国が決定する貢献)の提出が行われていない現状に鑑み、可能な限り早期提出を促す文言が盛り込まれた(注1)。
また、化石燃料からの脱却についても、合意に至ることができず最終文書には盛り込まれなかった。2023年にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催されたCOP28では、2050年までに温室効果ガス(GHG)排出を実質ゼロにするネットゼロ目標にむけ、締約国に「化石燃料からの移行を進め、今後10年間で行動を加速させる」ことを定め、最終合意文書にもその旨が盛り込まれた。その後のCOP29やこの度のCOP30では「化石燃料からの段階的廃止」についての議論に注目が集まったが、合意に至るのが難しかったとみられる。2025年11月23日付CNNは「2年前の合意からの後退」と報じた。
ただ、COP29で合意したNCQG(新規合同数値目標)については、2035年までに適用のための気候資金を3倍にする努力をよびかけることで合意した(注2)。COP29では、途上国向けの対策資金として2035年までに少なくとも年間3,000億ドルを拠出、併せて同年までに公的・民間資金を合わせて少なくとも年間1兆3,000億ドルまで増額する協力を求めた。COP30の議長国ブラジルは、開催前から、途上国への気候変動対策資金への協力を強調していた(2025年4月10日記事参照)。
また、持続可能燃料の利用を促進する「ベレン持続可能燃料4倍宣言」が共同提案され、ブラジル、日本、イタリア、インドを含む23カ国が参加している(2025年11月13日記事参照)。同宣言では、2035年までに、水素、バイオ燃料、合成燃料といった持続可能な燃料の生産と利用を4倍にするという世界的目標を掲げている。特に、航空、海運、鉄鋼、セメントなど、脱炭素化が難しい産業での持続可能燃料の需要を拡大することを見込んでいる。
(注1)NDCは、パリ協定締約国による温室効果ガス(GHG)排出削減目標。2035年までのGHG削減目標を設定し5年ごとに国連に報告しなければならないが、提出期限を当初の2025年2月から9月に延長したものの、いまだ全ての締約国からの提出に至っていない。
(注2)COP29では、途上国への気候変動対策資金に関する新規目標の設定が大きな争点になり、最終合意では2025年以降の新たな定量的目標である「新規合同数値目標(NCQG)」を設定した(2025年2月20日付地域・分析レポート参照)。
(辻本希世、久保田夏帆)
(ブラジル)
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