BRICS環境相会合でCOP30に向けた共同声明を採択、野心的な気候資金目標額を設定

(ブラジル、BRICS)

調査部米州課

2025年04月10日

ブラジルの首都ブラジリアで4月3日、BRICS環境相会合が開催され、国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)にむけた優先事項をまとめた共同声明が採択された。共同声明では、COP30での気候資金目標額として1兆3,000億ドルを目指すことや、森林保護を目的とした熱帯雨林ファイナンス(TFFF)の創設、パリ協定締約国による温室効果ガス(GHG)排出削減目標(NDC)(注)の早期提出を促す旨で合意した。会合に出席したCOP30で議長を務めるアンドレ・コヘア・ラーゴ氏は、「BRICSは、世界人口の約50%、世界のGDPの約40%を占め、経済学的にも地政学的にも重要な地域。気候変動問題は経済と密接に関連している」と述べ、BRICS諸国が一丸となって気候変動対策に取り組む重要性を強調した。

共同声明では、途上国への気候変動対策資金として、先進国主導のもと1兆3,000億ドルを拠出する目標額を目指す旨で合意した。2024年11月にアゼルバイジャンのバクーで開催されたCOP29では、途上国への気候変動対策資金に関する新規目標の設定が大きな争点になった。同会議では最終的に、途上国向けの気候変動対策資金として、2035年までに先進国主導のもと、少なくとも年間3,000億ドルを拠出するという目標が設定されたが、この目標額に対して途上国からは、「中国を除く途上国は、気候資金として2035年までに1兆3,000億ドルが必要」との批判が相次いだ。今回の共同声明では、この「1兆3,000億ドル」を引き継ぎ、同金額を新たな気候資金目標に設定するべく努力を促す旨が記載された。

森林保護を目的としたTFFFの創設は、2025年11月10日からブラジル北部パラ州の州都ベレン市で開催されるCOP30で正式に発表される予定。同ファイナンスは、森林減少に向けた対策や森林保全の為に必要な資金を補うもので、ラーゴ議長は「世界最大の熱帯雨林を保有するブラジルによる革新的な試みである」と述べた。

NDCの早期提出については、パリ協定の締約各国が2035年までのNDCを2025年2月10日までに国連へ提出しなければならなかったところ、2月13日時点で195カ国中13カ国しか提出がなされていない現状を受け、共同声明に盛り込まれた。なお、BRICS諸国の中でも、ブラジルとアラブ首長国連邦が提出したのみで、ラーゴ議長は、あらためてBRICS各国にも早期NDC提出への協力を呼び掛けた。なお、本共同声明の内容は、7月にリオデジャネイロ市で開催されるBRIC首脳会合でも議論される。

(注)NDCは、Nationally Determined Contributionの略。パリ協定締約国はNDCとして気候変動対策を実施しなかった場合のBAU(Business As Usual)シナリオと比べてのGHG削減目標を設定し、5年ごとに国連に報告することになっている。

(辻本希世)

(ブラジル、BRICS)

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