COP30に向けた首脳級会合、森林保全・エネルギー移行・不平等が主要議題に

(ブラジル、世界)

サンパウロ発

2025年11月13日

ブラジルのベレン市で11月6~7日にかけ、国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)の首脳級会合が行われた(注1)。議長国ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は会合の開会式で、地球温暖化対策としてエネルギー移行と自然保全の重要性を強調した。

開会式後、ブラジル政府は森林保護を目的とした基金「熱帯林フォーエバー・ファシリティー(TFFF)」の提案を正式に発表した(注2)。TFFFには、ノルウェー、フランス、インドネシア、ポルトガルなどが総額55億ドル超の拠出を表明した。

会合では次の3つのセッションが実施された。

1.「気候と自然:森林と海洋」:ブラジル政府は森林火災防止に向けた国際協力を求める「統合的火災管理と山火事に対する回復力」声明を発表し、50カ国が署名した。

2.「エネルギー移行」:ブラジル、日本、イタリアがCOP30の準備会合(10月13~14日開催)で提出した「ベレン4X」宣言が再度発表された。同宣言は、バイオ燃料や水素などの持続可能燃料の生産と利用を2035年までに4倍以上にすることを目指すもの。現在、19カ国が署名している。

3.「パリ協定の10年:国が決定する貢献と融資」:ルーラ大統領は温室効果ガス(GHG)排出量の多い多国籍企業や富裕層の融資責任を強調した。さらに、ブラジル政府は「飢餓・貧困・人間中心の気候アクションに関する宣言」を発表し、雇用創出や福祉充実も気候変動対策に含めるべきとした。現在、44カ国が署名している。

このほか、次の宣言も発表された。

〇「コンプライアンス炭素市場に関するオープン連合宣言」(注3):世界各国の炭素市場における排出量の相互利用に向け、共通基準・ルール策定の可能性を模索するもので、43カ国と欧州連合(EU)が署名。

〇「環境的レイシズム撲滅宣言」:環境破壊の影響が先住民やアフリカ系住民に偏っている現状を是正するための宣言で、現在19カ国が署名している。

(注1)COP30の開催期間は11月10~21日。首脳級会合はベレン市内の宿泊施設不足への対応として、参加人数が最も多い本会議と重ならない日程で開催された。COP30のアナ・トニ最高経営責任者(CEO)は現地紙「CNNブラジル」(2月21日付)のインタビューで、首脳級会合をCOP開催前に設定したことについて、「本会議の議論時間を十分に確保するのも、その要因の1つ」と述べている。

(注2)TFFFの提案はドバイで開催されたCOP28で初めて発表された。基金の仕組みについては2023年12月14日記事参照。政府・民間部門を合わせて1,250億ドルの資金調達が期待されている。

(注3)コンプライアンス炭素市場とは、国内法や国際協定に基づき、企業が温室効果ガス(GHG)排出削減義務を果たすために、排出量の取引を行う制度。規制に基づかない取引のボランタリー市場と区別して使用される。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル、世界)

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