米商務省、CHIPSプラス法に基づき次世代半導体EUV光源スタートアップに1億5,000万ドル拠出

(米国)

サンフランシスコ発

2025年12月04日

米国商務省傘下の国立標準技術研究所(NIST)CHIPS研究開発局は12月1日、次世代半導体向け極端紫外線(EUV、注1)光源を開発するスタートアップ、エックスライト(xLight、本社:カリフォルニア州パロアルト)に対し、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)に基づき最大1億5,000万ドルを提供する意向表明書(LOI)に署名したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。商務省は対価として、拠出相当分の同社の株式を取得する予定。これは、トランプ政権下でNISTが国立半導体技術センター(NSTC)の運営を担うようになってから、初の支援案件となる。

今回の政府による株式取得型の出資は、インテル、MPマテリアルズ、トリロジー・メタルズ、リチウム・アメリカズ、バルカン・エレメンツなどへの出資に続くもので、政府による戦略産業への資本関与が一段と拡大している(2025年7月15日2025年8月27日2025年10月6日2025年11月5日記事参照)。ハワード・ラトニック商務長官は「米国は長年、先端リソグラフィの最前線を他国に譲ってきたが、その時代は終わる。この技術はチップ製造の限界を根本から書き換えるものだ」と述べた。

エックスライトが開発する光源は、粒子加速器(注2)を利用した自由電子レーザー(FEL、注3)方式のEUV光源で、ASML(本社:オランダ・フェルトホーフェン)のEUV露光装置に外付け可能な次世代の光源として注目されている。エックスライトは、ASMLが現在採用するレーザー生成プラズマ(LPP、注4)方式光源の代替となり得る光源技術としている。

エックスライトによれば、FELはLPPと比較して最大4倍のEUV出力を持ち、パターニングや歩留まりを改善し、1台のスキャナーあたり年間数十億ドル規模の追加収益を生む可能性があるという。また、1台のFELで最大20台のASMLスキャナーを駆動でき、設計寿命は30年と説明している。

同社は2028年から、NYクリエーツ(2025年10月15日記事参照)と連携し、ニューヨーク州のアルバニー・ナノテック・コンプレックスでFELプロトタイプの建設・実証を進める予定だ。

(注1)波長13.5ナノメートル(nm)前後の非常に短い光。微細回路をウエハーに描く半導体露光技術の最先端方式で、7nm未満のロジック製造に不可欠。世界でEUV露光装置を製造できるのはASMLのみ。

(注2)電子や陽子など「荷電粒子」を、高周波電場(RF)や磁場を使って高速に加速する装置。

(注3)粒子加速器で加速した電子を、N極・S極が交互に並んだ磁石列に通し作られるレーザー。

(注4)ASMLのEUV露光装置が使用する光源方式。液体スズに高出力レーザーを照射してプラズマを発生させ、EUV光を生成する。

(松井美樹)

(米国)

ビジネス短信 b63b279abedf844a