米エネルギー省、リチウムアメリカズに5%出資、GMとの合弁でネバダ州リチウム鉱山開発支援

(米国、カナダ)

サンフランシスコ発

2025年10月06日

米エネルギー省(DOE)は9月30日、カナダのリチウムアメリカズ(本社:ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー)、および同社とゼネラルモーターズ(GM)が設立した合弁事業に対し、それぞれ5%の株式を取得したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。DOEは株式を低価格株のワラント(注1)を通して取得することで、経済的出資持ち分はリチウムアメリカズが59%、GMが36%、DOEが5%となり、DOEは合弁事業の理事会にオブザーバーとして参加できる。合弁事業の対象は米国最大規模のリチウム資源を有する米ネバダ州サッカーパス鉱山開発プロジェクトだ。今回の出資は、22億3,000万ドル規模の連邦ローン再構築パッケージの一環(注2)として実施された。米国のリチウム供給網の確立と対外依存の低減を後押しする狙いがある。

GMは6億2,500万ドルを投資し、本プロジェクトの第1段階で生産されるリチウム(年間4万トン生産)の全量を、20年間を上限に購入可能なオフテイク契約を締結した。また、GMによる未購入分については、リチウムアメリカズが第三者へ販売できる。サッカーパス鉱山は最終的に年間16万トン規模の生産を5段階にわたる拡張により目指す。2028年までに、米国のリチウム需要の25%を単独で賄う想定だ。DOEのクリス・ライト長官は「本プロジェクトは重要鉱物の外国への依存を減らし、国内供給網を強化する。ドナルド・トランプ大統領のリーダーシップの下、米国のリチウム生産は飛躍的に拡大する」と強調した。米国政府は、MPマテリアルズ(レアアース)や半導体大手インテルへの出資に続き(2025年7月15日記事8月27日記事参照)、重要鉱物や先端技術産業を国家安全保障上の戦略分野と位置付け、直接資本参加を拡大する動きを強めている。

(注1)極めて低い価格(この場合1株0.01ドル)で将来的に株式を購入できる権利を指す。通常の市場価格より著しく低いため、実質的に無償に近いかたちで株式を取得できる仕組みだ。政府が税金を用いた出資の際に担保やリスク低減の目的で活用される。

(注2)バイデン前政権下の電気自動車(EV)市場支援の目的で、2024年10月28日にDOEと締結済みだったサッカーパス鉱山開発向けの融資契約。トランプ政権下でクリーンエネルギー案件向けの融資の見直しが進む中、「資本参加(ワラントによる5%株式)」が追加された。

(松井美樹)

(米国、カナダ)

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