EU、経済安保強化に向け、投資スクリーニング制度の改正案で合意

(EU)

ブリュッセル発

2025年12月16日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は12月11日、域外からの直接投資の是非を審査する投資スクリーニング制度に関する対内直接投資審査規則(2020年10月13日記事参照)の改正案で政治合意した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。今回の合意には、全加盟国に対する投資スクリーニング制度の導入義務化、最低限審査対象にすべき投資分野の設定、審査対象となる外国投資の定義の拡大などが含まれる。改正案は今後、両機関の正式な採択を経て施行される見込み。適用開始は、施行から18カ月後となる。

同規則は、安全保障と公の秩序の保護の観点から、各加盟国が独自に設置し、審査する投資スクリーニング制度に関し共通枠組みを設定するとともに、欧州委員会と加盟国間の協力メカニズムを導入するものであり、EUレベルの投資スクリーニング制度を導入するものではない。これは、安全保障が加盟国の排他的権限であるためで、投資スクリーニング制度において投資を承認するかの最終的な判断を行うのは投資先の加盟国だ。

改正案は、経済安保の強化に当たり、投資スクリーニング制度の有無や加盟国ごとに異なる審査対象などにより生じる制度上の抜け穴をふさぐべく提案(2024年1月29日記事参照)されたもの。なお、欧州委は、同規則の積極的な実施など経済安全保障強化に向けた新たな政策文書(2025年12月12日記事参照)を発表したばかりだ。

今回の主な合意内容は次のとおり。

  • 投資スクリーニング制度の設置義務化:これにより、現在未導入のギリシャ、キプロス、ブルガリア、クロアチアは今後、投資スクリーニング制度を設置することになる。
  • 最低限の共通審査範囲の設定:二重用途品・軍事装備、重要技術(人工知能、量子技術、半導体)、重要原材料、エネルギー・輸送・デジタルインフラ、選挙インフラ、金融システムに関連した外国投資については、加盟国に審査の実施を義務付ける。
  • 外国投資の定義の拡大:EU企業による投資であっても、域外企業が支配する企業の場合は、外国投資として加盟国による審査対象とする。
  • 透明性の向上と手続きの調和:加盟国に対し、投資スクリーニング制度の審査範囲に関するガイダンスの策定と、手続き面で最低限の調和を求める。

一方で、欧州議会が求めていた、加盟国間で意見の相違がある場合に欧州委に最終判断を行う権限を付与する案は採用されず、引き続き投資先の加盟国が承認権限を有することが確認された。

(吉沼啓介)

(EU)

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