吉林省松原市で世界最大規模のグリーン水素・アンモニア・メタノールの生産拠点が稼働

(中国)

大連発

2025年12月24日

中国能源建設集団(以下、「中国能建」)は12月16日、同社が投資・建設した世界最大規模のグリーン水素・アンモニア・メタノール一体化プロジェクトである中能建松原水素産業園プロジェクト第1期が吉林省松原市にて同日正式に操業を開始したと発表した。

同プロジェクトでは、風力発電および太陽光発電で生産したグリーン電力を化学工業団地に送り、水の電気分解によりグリーン水素を製造する。水素は貯蔵・輸送が難しいため、同プロジェクトではグリーン水素を空気から分離した窒素または再生可能な二酸化炭素(CO2)と組み合わせてグリーンアンモニアまたはグリーンメタノールを合成し、長期貯蔵とグローバル輸送を実現するとしている。

同プロジェクトは2023年9月に着工し、今後段階的に新エネルギー発電由来の電力を300万キロワット(kW)、グリーン合成アンモニアおよびグリーンメタノールを80万トン生産する計画となっている。プロジェクト第1期の総投資額は69億4,600万元(約1,528億円、1元=約22円)に上り、今回の稼働開始により、新エネルギー発電設備80万kW(内訳は風力発電75万kW・太陽光発電5万kW)が建設され、グリーン水素を年4万5,000トン、グリーンアンモニアとグリーンメタノールを合わせて年20万トン生産することを見込んでいる。これは標準炭換算で石炭約60万トンの削減につながり、年間のCO2排出削減量は74万トンに達するとしている。

同社の発表によると、同プロジェクトの稼働式で同社は大手認証機関であるフランスのビューローベリタスからISCC EU(注)の認定を受けた。また、同時にベルギーの海事大手企業であるCMBテックと世界で初となるグリーンアンモニア遠洋航海燃料の販売契約を締結したとしている(「中国能源新聞網」12月17日付、CMBテック12月16日付プレスリリース)。

中国国家発展改革委員会が2022年3月に公布した「水素エネルギー産業発展中長期計画(2021~2035年)」では、水素エネルギー産業を戦略的新興産業および未来産業の重点発展分野に位置付けている(2022年3月29日記事参照2025年6月24日付地域・分析レポート参照)。また、2025年10月に開催された中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議(四中全会)で採択された「国民経済と社会発展の第15次5カ年規画」(対象期間は2026~2030年)の制定に関する中国共産党中央委員会による建議(2025年10月31日記事参照)では、水素エネルギーを新たな経済成長エンジンと位置付ける方針が明記されている。

松原プロジェクト第1期の操業は、中国の水素エネルギー産業戦略の実施における重要な節目であり、国際認証の取得とビジネスモデルの確立により、グリーン水素関連産業の発展と脱炭素への転換を促進するとみられる。今後、同プロジェクトの進捗とともに、中国のグリーンエネルギーの生産動向がさらに進展するか注目される。

(注)ISCC EUは、EUの再生可能エネルギー指令(RED II)に基づいて運用される認証制度。主にEU域内で輸送用燃料として使用されるバイオ燃料を対象としており、持続可能性要件や温室効果ガス排出量の削減率に関して厳格な基準が定められている。

(呉暁東)

(中国)

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