水素エネルギー中長期発展規画、水素をカーボンニュートラル実現の重要手段に位置付け

(中国)

上海発

2022年03月29日

中国・国家発展改革委員会は3月23日、「水素エネルギー産業発展中長期規画(2021~2035年)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(以下、規画)を発表した。2020年5月の全国人民代表大会(全人代)において、国家発展改革委員会が報告した「2020年度国民経済・社会発展計画」の中で、国としての水素エネルギー産業発展戦略計画を策定すると言及していたものが、今回発表されたかたちだ。

規画では、まず、2025年までにモデル都市群における実証事業で大きな成果を上げるとした。モデル都市群には、これまで北京市、上海市、広東省が選定されている(2021年9月7日記事参照)。クリーンエネルギーによる水素製造と水素エネルギーの貯蔵・輸送技術を大きく進歩させ、副生水素(注)と再生可能エネルギーによる水素製造に基づく水素エネルギー供給システムの初歩的段階を確立する。水素燃料電池自動車(FCV)の保有台数は5万台、再生可能エネルギーによる水素製造は年間10万~20万トン、これにより年間の二酸化炭素の排出を100万~200万トン削減するとしている。

2030年までには、こうした水素エネルギー産業技術のイノベーションシステムを完成させる。再生可能エネルギーによる水素製造を広く応用し、カーボンピークアウト目標実現の有力な手段とする。

2035年までには、水素エネルギー産業システムを形成し、交通、エネルギー貯蔵、工業などの分野で多様な水素エネルギー応用のエコシステムを構築する。最終的なエネルギー消費において、再生可能エネルギーによって生産された水素の割合を大幅に上昇させ、エネルギーのグリーン転換型発展の促進を目指す。

また、規画では、水素エネルギーインフラ施設の建設を総合的に推進する。具体的には、(1)水素製造施設の設置、(2)水素貯蔵・輸送システムの構築、(3)水素補給ネットワークの構築、既存ガソリンスタンドの水素ステーションへの改築などを支援するとしている。なお、水素エネルギー利用については、交通、エネルギー貯蔵、発電、工業分野での実証や積極的な展開を図るという。

清華大学の欧陽明高教授は、規画に関する解説の中で、再生可能エネルギーによる電力価格が0.15元(約2.85円、1元=約19円)/キロワット時(kWh)未満であれば、再生可能エネルギーからの水素生産の経済性を担保することができる、と述べた。

(注)他の製品を製造する際に、副産物として生じる水素。

(高橋大輔)

(中国)

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