中国共産党、次期5カ年規画に対する建議で発展の方向性定める

(中国)

北京発

2025年10月31日

中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議(2025年10月27日記事参照)で採択された「国民経済と社会発展の第15次5カ年規画」の制定に関する共産党中央委員会による建議と、習近平総書記(国家主席)による建議の説明が10月28日、中国国営メディア「新華社」で公表された。建議は、3つの大分類、15のセクション、61項目から構成されている。

第1分類(第1~2セクション、第1~6項目)では、総論として、次期5カ年規画の重要性、経済・社会の発展のためのガイドライン、主な目標に言及している。

次の5年間で7項目の目標を挙げた(注1)。そのうち「質の高い発展において顕著な成果を得る」では、経済成長を合理的な範囲内に維持し、全要素生産性を着実に向上させ、個人消費を高め、経済成長の原動力としての内需の役割を引き続き強化するとした。また、「人民生活の質を継続的に向上させる」では、個人所得の伸び率と経済成長率の一致、労働報酬上昇率と労働生産性上昇率の一致を保つとした(注2)。

第2分類(第3~14セクション、第7~55項目)では、各論として、産業発展、科学技術革新、国内市場、経済体制、対外開放、農村振興、地域発展、文化建設、民生保障、グリーン発展、安全発展、国防建設という12の重点分野における提言と取り組みに言及している(注3)。このうち、対外開放の取り組みは次のとおり。

自主的開放の積極的拡大の項目では、サービス業を重点とする市場参入の拡大、サービス貿易などの開放協力プラットフォーム構築の統一的な計画を実施するとした。また、資本項目における人民元の開放レベルの引き上げ、自主管理が可能な人民元建てクロスボーダー決済システムを構築するとした。

貿易推進では、貿易強国の建設の加速、輸出入の均衡ある発展の推進、サービス貿易の強力な発展を実施し、デジタル分野の開放を秩序立て拡大するとした。

投資促進では、外資誘致の新たな優位性を構築し、外資参入ネガティブリストを縮小し、外資企業の国内再投資を促進するとした。

第3分類(第15セクション、第56~61項目)は、党の指導の堅持・強化などを盛り込んでいる。

説明では、建議においては経済・社会の発展に対して定性的な目標の提示にとどめ、定量目標と業務プランは、必要に応じ規画の綱要を策定する際に提示するとした。また、質の高い発展の推進について、質の効果的な向上と量の合理的な成長を実現し、経済の持続的かつ健全な発展と社会の全面的な進歩を促進するとした。

(注1)次の7項目を挙げた。(1)質の高い発展において顕著な成果を得る、(2)科学技術の自立・自強を著しく向上させる、(3)改革の全面的深化において新たな突破口を開く、(4)社会文明を著しく向上させる、(5)人民生活の質を継続的に向上させる、(6)美しい中国の建設で新たな進展を遂げる、(7)国家安全保障のさらなる強化。

(注2)2035年までに経済力、科学技術力、国防力、総合的国力、国際的影響力を著しく向上させ、1人当たりGDPを中等先進国レベルに到達させ、人民により幸せで美しい生活をもたらし、社会主義現代化を基本的に実現するとした。

(注3)12の分野に関し、次のような提言を行った。(1)現代産業システムの構築と実体経済の基盤強化、(2)高水準の科学技術の自立・自強を加速し、「新質生産力」の発展を牽引、(3)強大な国内市場の構築と新たな発展パターンの構築を加速、(4)高水準の社会主義市場経済体制の構築を加速し、高水準の発展の動力を強化、(5)ハイレベルな対外開放を拡大し、国際協力とウィンウィンな関係の新たな局面の開拓、(6)農業・農村の近代化を加速し、農村の全面的振興の着実な推進、(7)地域経済の体制の最適化と地域間協調による発展の推進、(8)全民族の文化創造によるイノベーション活力の喚起、社会主義文化の繁栄と発展の促進、(9)民生の保障と改善を強化し、全人民の「共同富裕」の着実な推進、(10)経済・社会の発展における全面的グリーン化の加速と「美しい中国」の建設、(11)国家安全システムと能力の近代化の推進、さらに高水準の「安全な中国」の建設、(12)国防と軍隊の近代化の質の高い推進。特に、(3)強大な国内市場の構築と新たな発展パターンの構築を加速では、消費振興や全国統一大市場(2022年4月20日記事参照)の建設、内巻(過度な競争)の是正などが言及された。また、(9)民生の保障と改善を強化し、全人民の「共同富裕」の着実な推進では、賃金決定メカニズムの整備や賃金の団体交渉制度の拡充などが言及された。

(蔣春霞)

(中国)

ビジネス短信 656979c2f6c3c46c