ドイツ、核融合炉実現へ国家戦略と州連携で推進

(ドイツ)

ベルリン発

2025年11月25日

バイエルン州などドイツ6州(注)は、10月31日に「核融合研究アライアンスPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を結成した。核融合を将来のエネルギーミックスにおける基盤技術と位置付け、商業用核融合炉の建設を目指す。それに向けて連邦政府主導のハイテク・アジェンダ(2025年8月6日記事参照)や10月1日に閣議決定された核融合行動計画とも連携。産学とスタートアップによる協力体制の構築、研究者の育成とネットワーキング強化などの取り組みと各州固有の重点プロジェクトを並行して進めていく。また、技術的には、現在最も有望とされるレーザーによる慣性核融合と磁場閉じ込めによる核融合の両方式の研究を並行して進め、技術リスクを分散する方針をとる。

州レベルの研究アライアンス結成に先立ち、ドイツ連邦政府は10月1日、核融合発電の実現に向けた行動計画「核融合発電所への道」を閣議決定していた。ドイツを核融合分野での先導的なイノベーションの拠点にすることを目指し、2029年までに研究支援や研究ネットワークの整備などに20億ユーロ超を投じる。

前政権が核融合技術を応用指向の基礎研究と位置付けていたのに対し、現政権は連立協定書に世界初の核融合炉をドイツに設置する目標を明記(2025年4月11日記事参照)。さらに、7月に発表した国家戦略「ハイテク・アジェンダ・ドイツ」内でも、核融合研究を技術革新と経済競争力強化のための中核施策として格上げしていた。

核融合は水素同位体を高温で融合させ、大きなエネルギーを作り出す技術で、二酸化炭素を排出せず、高レベルの放射性廃棄物も発生しないとされている。しかし、技術的課題は多く、環境保護団体からは「50年以内の実用化は困難」との批判もある。「フランクフルター・アルゲマイネ」紙は、大型予算をつけた政府の取り組みが核融合分野のスタートアップを満足させるものだとする一方で、ドイツが資金面では米国と中国の企業に大きく後れを取っている点を指摘している(10月6日)。

(注)バイエルン州、ハンブルク州、ヘッセン州、メクレンブルク・フォアポンメルン州、ザクセン州、シュレスビヒ・ホルシュタイン州。

(打越花子)

(ドイツ)

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