韓米首脳会談が開催、安全保障や関税交渉が進展
(韓国、米国)
ソウル発
2025年11月04日
韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は、APEC週間を迎え、国賓として訪韓中の米国のドナルド・トランプ大統領と2回目となる韓米首脳会談を行った(2025年8月27日記事参照)。李大統領は韓国南部の慶州市の慶州博物館でトランプ大統領を迎え、会談に先立って芳名録への署名や、公式歓迎式典、ムグンファ大勲章授与、贈答品授与など、国賓訪問の儀礼に従ってトランプ大統領を歓待した。韓国大統領室のブリーフィングによると、首脳会談は約90分間の昼食会形式で行われ、経済や安全保障、朝鮮半島情勢、地域情勢、韓米間の造船業協力など、包括的な議題について議論が行われた。
安全保障分野については魏聖洛(ウィ・ソンラク)国家安保室長、韓米関税交渉の内容については金容範(キム・ヨンボム)大統領室政策室長がそれぞれ次のとおり、結果の概要報告を行った。
【安全保障分野】
- 急激に変化する域内安全保障環境に対応するため、韓国の国防費拡大と原子力潜水艦の導入問題について議論した。トランプ大統領は李大統領に対し、北朝鮮の原子力潜水艦建造などの状況変化によっては、韓国も原子力潜水艦能力が必要になるという点に共感を示し、後続協議をしていこうと述べた。
 - 李大統領から平和目的のウラン濃縮、使用済み核燃料の再処理などに対し米側が関心を払うことを要請し(注)、トランプ大統領はこれに共感を示した。両者は原子力など革新戦略産業分野でより大きな協力機会を模索すべきいう点で意見が一致した。
 - トランプ大統領は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記との米朝首脳会議の開催問題について、「2018年のシンガポール合意を土台に、朝鮮半島平和実現のために必要な役割を果たし、その過程で李大統領と緊密に相談していく」と述べた。
 
【韓米関税交渉など経済分野】
- 8月に合意した対米金融投資3,500億ドル(2025年8月5日記事参照)は、現金投資2,000億ドルと造船業協力1,500億ドルで構成するが、現金投資2,000億ドルは年間投資上限を200億ドルに設定した。これにより、韓国の外国為替市場に及ぼす影響を最小化することが可能になった。
 - 造船業協力1,500億ドルは、韓国企業主導で推進し、投資のほかに保証も含めることで合意した。新造船の建造開始時に長期金融で資金を調達することで、外国為替市場の負担を減らすとともに、船舶受注の可能性も高くなる。
 - 相互関税は既に25%から15%に引き下げられているが、今後もこれを維持することとした。自動車・同部品の関税も、25%から15%に引き下げられる。医薬品、木材製品は最恵国待遇を受け、航空機部品、ジェネリック医薬品、米国内で生産されない天然資源などは無関税の適用を受ける。半導体の関税は、韓国の主な競争相手の台湾と比べて不利ではない水準とする。米・牛肉を含む農業分野の追加開放を防ぐことができた。
 
韓国大統領室によると、トランプ大統領は李大統領を再びホワイトハウスに招待したいとの意向を表明し、時期を調整することにした。また、今回の首脳会談の成果について、魏室長は「さまざまな懸案に対して、米国側の積極的な協力意思を確認でき、未来志向的同盟にさらに格上げされる韓米同盟の新しい場を開くことができた」と強調した。
(注)1974年に締結された韓米原子力協定では、韓国のウラン濃縮と核燃料再処理を制限している。2015年の改定時でも制限緩和がされておらず、近年では加速する北朝鮮の核開発への脅威から、協定改定について韓米間で議論が行われていた。
(橋爪直輝)
(韓国、米国)
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