米USTR、メキシコ政府に矢崎グループ工場の労働問題の確認要請、2023年以来2度目
(米国、メキシコ)
ニューヨーク発
2025年11月25日
米国通商代表部(USTR)は11月19日、矢崎グループがメキシコ中部グアナファト州で操業する自動車部品工場で、労働者の団結権と団体交渉権を侵害した疑いがあったとし、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)で設けられた「事業所特定の迅速な労働問題メカニズム(RRM)」に基づき、メキシコ政府に事実確認を要請したと発表
した。
RRMは、USMCA締約国内の事業所単位での労働権侵害の有無を判定する手続きで(注)、労働権侵害の事実が確認されれば、USMCA特恵措置の適用停止などの罰則が科され得る。RRMに基づく労働権侵害の事実確認要請は、締約国政府が独自に開始できるが、労働組合などの第三者機関が締約国政府に対し、事実確認要請を行うよう申し立てることも可能だ。
メキシコの矢崎工場に対しては、2023年8月にも、メキシコの労働組合カサ・オブレラ・デル・バビオ(COB)からUSTRへの申し立てがあり、RRMに基づきメキシコ政府に事実確認を要請していたが、メキシコ政府は労働権侵害を証明する十分な証拠がないことを理由にその要請を拒否していた(2023年8月8日記事、2023年8月24日記事参照)。USMCAの規定に基づき米国政府が引き続き労働権侵害ありと判断した場合、いわゆる裁判所に相当するパネルの設置をメキシコ政府に要請することもできたが、そうした手続きは踏まれず、同年10月、USTRが当該工場での労働問題の解決を発表した経緯がある(2023年10月5日記事参照)。
矢崎グループに関わる2回目の事実確認要請
は、メキシコ国内の自動車労働組合、自動車産業全国独立労働組合(SINTTIA)が2025年10月、USTRに対して、矢崎総業と当該工場の現職組合が従業員の組合活動に干渉したとして、申し立てを行った。
USTRは「RRMを発動する信頼に足る十分な証拠があった」とし、労働問題の解決に両国が合意するまで、当該工場で製造される自動車部品、ワイヤーハーネス、電子部品などに関する最終的な関税の清算を保留すると発表した。
(注)ただし、米国・カナダ間にはRRMは設けられていない。
(久峨喜美子)
(米国、メキシコ)
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