米USTR、矢崎グループのメキシコ工場での労働問題解決を発表

(米国、メキシコ)

ニューヨーク発

2023年10月05日

米国通商代表部(USTR)は10月4日、メキシコ政府に事実確認を要請していた矢崎グループの自動車部品工場(当該工場)での労働問題が解決したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

本件は、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に基づき、問題解決が図られていた。米国政府は8月に、メキシコ国内の労働組合からの提訴を受けてメキシコ政府に事実確認を要請したが、メキシコ政府は労働権侵害を証明する十分な証拠がないことを理由にその要請を拒否していた(2023年8月24日記事参照)。USMCAによれば、米国政府が引き続き労働権侵害ありと判断した場合は、いわゆる裁判所に相当するパネルの設置を要請できることになっており、提訴を行ったメキシコの労組もその可能性を示唆していた。しかし、米国政府はパネル設置の道は選ばず、矢崎グループおよびメキシコ政府と直接、問題解決の取り組んだようだ。USTRによると、矢崎グループとメキシコ政府は次の対応策を講じたとしている。

  • 矢崎グループが北米グループのウェブサイトに労組活動に対して中立を維持するとの声明を掲載するとともに、紙のコピーをメキシコ内の工場で配布し、労働者が労働権について懸念を抱いた際の社内ホットラインを設置。
  • メキシコ政府とILOが当該工場の労働者、企業側代表者、労総側代表者向けに結社の自由と団体交渉権に関する研修を実施。
  • メキシコ政府が当該工場に、労組が民主的な投票を行う際に誤情報を拡散することは不正とみなされ、政府当局に報告されなければならない、と記した声明を掲載。

キャサリン・タイUSTR代表は「RRMを通じてメキシコの労働者が提起した懸念を、メキシコ政府と迅速に解決することは、公正で健全な競争を促進するための重要な要素だ」との声明を出している。また、タイ代表は、メキシコ政府への事実確認要請と同時に停止していた、当該工場からの輸入に関する関税の精算を再開するよう、財務長官に要請した。これまでメキシコ政府が事実確認要請を拒否した案件は本件を含めて2件で、もう1件のグルーポ・メヒコ所有の鉱山に係る案件ではパネル設置に至っている(添付資料参照)。

(磯部真一)

(米国、メキシコ)

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