メキシコ・エネルギー省、エネルギー政策に関する米国議員のUSMCAパネル設置要請に対し反論

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2025年11月19日

米国のジョディ・アリントン下院議員らは11月4日、トランプ政権と米国通商代表部(USTR)に対して、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)でのパネル設置などを要求する超党派の法案を提出した。メキシコのエネルギー政策が国営企業を優遇しており、USMCAで規定されている無差別の市場アクセスに違反していると主張する内容となっている。同法案を主導した1人である民主党のヘンリー・クエラー議員は「メキシコがUSMCAを確実に履行し、米国企業を公平に扱うことを保証するため、超党派の法案を主導している」とコメント。また、米国商工会議所のジョン・マーフィー国際担当副会長は「メキシコのエネルギー製品に関する新たな輸入許可制度、国営企業の優遇政策、過剰な官僚主義、行政上の負担、不当な検査などに対処する必要がある」と主張した。

メキシコ・エネルギー省は「事実無根」と反論

本件は、メキシコ現地紙「レフォルマ」(11月11日付)でも大きく報道され、これに対しメキシコのエネルギー省(SENER)は11月11日、「レフォルマ」紙に掲載された「米国石油会社がUSMCA違反を主張」という記事に関する説明」と題する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。SENERは「メキシコ政府が石油公社(PEMEX)および電力庁(CFE)を優遇するために米国石油会社を差別しているというのは事実無根」と報道を強く否定した。また、エネルギー分野におけるメキシコの法的枠組みについては、直近の憲法改正および法改正を含め(2025年5月1日付地域・分析レポート参照)、明確かつ透明性のある規則のもと民間投資を維持・促進しているとした。その例として、新しく導入した官民混合契約の制度を挙げ、USMCAとの整合性を強調した。さらに、2022年に同案件でのパネル設置要請があったが、結果として紛争解決パネルは設置されなかったこと(2022年8月9日記事2022年12月23日記事参照)を引き合いに出し、エネルギー政策の正当性を主張した。最後に、メキシコ政府としては貿易相手国の懸念事項に積極的に対応するとの姿勢を示した。

しかし、今回提出された法案では、USMCAのパネル設置がされない場合は、同協定の共同見直しで本件を取り上げるよう要請しており、メキシコのエネルギー政策が見直しの議題になる可能性は依然として残されている。

(阿部眞弘)

(メキシコ、米国)

ビジネス短信 c0f15040cea3526e