EU理事会、COP30前にNDC提出、注目される主導役としての貢献

(EU、中国)

ブリュッセル発

2025年11月13日

EU理事会(閣僚理事会)は11月5日、未提出となっていたパリ協定に基づく2035年の温室効果ガス(GHG)排出削減目標(国が決定する貢献:NDC)を66.25%から72.5%とすることを承認した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。議長国デンマークのラース・アーガード気候・エネルギー・供給相は、ブラジルのベレンで11月10日から開催の国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)を前にして、EUのパリ協定に対する強い貢献を示し、COP30で参加国とともにグローバルな気候行動を促すことが可能となったとコメントした。また、EUは電源別発電容量に占める再生可能エネルギー(再エネ)の割合は2023年に44%に達し、2024年は47%の予測だとし、グローバル・ストックテイク(GST)に記された2030年までに再エネ能力を3倍に拡大し、エネルギー効率を倍増させる取り組み(2025年10月30日記事参照)への貢献も強調した。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は11月7日、COP30の首脳級会合で、議長国ブラジルが宣言した「開かれた炭素価格制度を目指す有志連合(Declaration on the Open Coalition on Compliance Carbon Markets外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」に中国など11カ国(注)とともに、EUの参加を表明した。世界銀行によると、50カ国以上に80の炭素価格制度が存在しており、有志連合はNDC達成に向けて、協力と情報交換を行う。EUは2005年に排出量取引制度(EU ETS)を開始して以来、ETS対象部門の排出量を50%削減し、2,500億ユーロ以上のオークションの収入を生み出している。

COP30で注目されるEUと中国の役割

欧州経済を専門とするブリュッセルのシンクタンクのブリューゲルは、EUは中国と7月の首脳会議でCOP30の成功に向けた協力を確認しているが(2025年7月30日記事参照)、グリーンへの移行のアプローチ方法は異なっていると指摘する。EUは、EU ETSの導入によってGHG排出量を削減し、化石燃料からの脱却を目指している。EU ETSの取引価格はトン当たり約78ユーロと高い。一方の中国は、排出削減よりもクリーン技術の生産、世界への輸出を通じた供給側のアプローチを主としている。過剰生産を通じ、グローバル市場で再エネにかかるコストの低減や低価格の電気自動車(EV)の供給に貢献している一方、中国の炭素価格はトン当たり約7ユーロと安価で、自国での石炭使用量は削減していない。

EUは、気候変動対策による域内企業への負担の軽減を通じて、域内産業の競争力強化を模索している。こうした中、COP30でどのように気候中立策を主導していくことができるか注目される。

(注)ブラジル、中国、EU、英国、カナダ、チリ、ドイツ、メキシコ、アルメニア、ザンビア、フランス、ルワンダが署名。常時参画可能。

(薮中愛子)

(EU、中国)

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