EU理事会、COP30に向け途上国への財政支援の貢献を強調も、注視されるNDC提出

(EU)

ブリュッセル発

2025年10月30日

EU理事会(閣僚理事会)は10月21日、ブラジルのベレンで11月10日から開催される国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)に向けたEUの交渉上の立場PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を承認した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。2024年は観測史上最も暑い年となり、気候変動の影響とリスクは複雑性を増し、管理が難しくなっていることを指摘し、効果的な対策には、ルールベースに基づく多国間協力が必要で、EUはCOP30で引き続き気候変動対策の中核を担うとした。

エネルギー移行には、2023年にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催されたCOP28でグローバル・ストックテイク(GST)に明記された2030年までに再生可能エネルギー(再エネ)能力を3倍に拡大し、エネルギー効率を倍増させる(2023年12月25日記事参照)取り組みを、化石燃料への補助金の廃止や産業部門の脱炭素化政策と並行して実施する必要性を明記し、EUはどの国も取り残さない公正な移行に貢献していくとした。

一方、EUはパリ協定に基づく2035年の温室効果ガス(GHG)排出削減目標(国が決定する貢献:NDC)を期限内に提出できていない。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は9月24日の国連気候サミット(2025年10月6日記事参照)で、加盟国内で66%から72%の範囲で設定することで合意したと表明するにとどまっており、COP30に向けた加盟国内の調整が急がれている。

EU理事会は10月27日、EUと加盟国の2024年の気候変動対策への公的資金拠出は317億ユーロ(前年比10.8%増)規模となり、さらに110億ユーロの民間資金を動員したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。公的資金の約半分は返済不要の補助金だった。また、2019年から2023年の間に、途上国向けの財政支援は75%増加した。欧州投資銀行(EIB)の途上国向け資金は2022年以降4倍となり、2024年にはEU域外での気候や環境関連の融資全体の31%にまで達した。2024年のアゼルバイジャン・バクーで開催されたCOP29で設定された途上国への気候変動対策資金目標(2025年10月27日記事参照)に対する貢献を強調するとともに、途上国の自主的な貢献や、国際開発金融機関などによる貢献の必要性を記した。

(薮中愛子)

(EU)

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