中国、AIによる新型工業化の推進加速

(中国)

北京発

2025年11月10日

中国の工業情報化部(工信部)は11月3日、「人工知能(AI)による新型工業化の推進加速外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。同文書は、中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議(4中全会)での提言(注1)などを踏まえ、質の高い次世代型工業化を意味する「新型工業化」で、AI産業の革新やAIの応用強化を推進するためのものとしている。

文書は、(1)AI発展の理論、(2)AIによる新型工業化推進の実績、(3)AIによる新型工業化に向けた今後の取り組みという3つの項目で構成している。

(1)では、AIによる新型工業化の重要性、主な課題、課題解決ツールに言及した。

(2)では、工業情報化部傘下のシンクタンクの中国情報通信研究院(CAICT)が、中国の2024年におけるAI中核産業の規模が9,000億元(約19兆8,000億円、1元=約22円)以上になると試算した(注2)。

(3)では、工業情報化部は新型工業化の実現に向け、AIイノベーションと製造業への応用による「双方向型の支援」を推進するとした。その上で、AI産業の質の高い発展を促進し、全方位的かつ高水準の新型工業化をサポートするとした。

また、AIを用いた新型工業化の実現に向けた今後の取り組みとして、「AI+製造」の推進深化や、AI分野で優位性を持つ企業の育成など(注3)を挙げた。

「AI+製造」の推進深化については、「AI+製造」特別行動の実施に関して意見の検討と策定をするほか、製造企業向けにAI応用ガイドラインを公布・施行するとした。また、AI技術を生産・製造の重要工程に組み込むことを推進し、AIを活用した設計、シミュレーション、故障予知などの活用場面を拡充するとした。

AI分野で優位性を持つ企業の育成については、エコシステムを主導する企業を育成し、主導的な企業によるAI分野へのイノベーション投資の拡大を推奨するとした。また、中小企業の段階に応じた発展を支援し、AIの応用を進めるサービス企業を増強するとした。

(注1)4中全会では、科学技術分野に関して「高水準の科学技術の自立・自強を加速し、『新質生産力』の発展を牽引」と提言した(2025年10月27日記事10月31日記事参照)。

(注2)企業の規模について、AI関連企業は5,000社以上、国家レベルのAI「専精特新」企業(専門性を有し、精密な技術力を持ち、独自性のある革新的な中小企業)は400社以上となっている。

(注3)文書で言及した取り組みは、コア技術のブレークスルーの加速、「AI+製造」の推進深化、AI分野で優位性を持つ企業の育成、産業発展環境の最適化、安全ガバナンスの保障強化、国際交流・協力の深化。

(蔣春霞)

(中国)

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