イタリアの環境・エネルギー安全保障相、COP30開催で「パリ協定からの後退は許されない」と強調

(イタリア、ブラジル、EU、世界)

ミラノ発

2025年11月27日

イタリアのジルベルト・ピケット・フラティン環境・エネルギー安全保障相は11月10日、ブラジルのベレンで開催された国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)の本会議開会日に合わせ、ローマの外国人記者協会本部で開催された記者会見において、「パリ協定から10年が経過した今、後退は認められない」と強調。エネルギー転換に向けた官民一体の取り組みに積極的な姿勢を示した。

イタリアの気候変動対策への投資は、2023年の8億3,800万ユーロから、2024年には34億4,000万ユーロへと大幅に増加した。その内訳は、公的資金が16億7,000万ユーロ、民間資金が17億7,000万ユーロ。主な取り組みとしては、ジョルジャ・メローニ政権が推進する対アフリカの外交政策「マッテイ・プラン」(2023年12月8日記事参照)の中核を担う気候変動ファンドや、SACE、SIMESTなどの企業の輸出や海外進出を支援する政府系機関を通じたグローバルな環境関連プロジェクトへの参加を挙げている。

また、イタリアはCOP30の準備会合(プレCOP30)において、バイオ燃料や水素などの持続可能燃料の生産と利用を、2024年比で2035年までに4倍にすることを目標とする「ベレン4X」宣言に参加した。議長国ブラジルとイタリア、日本が共同提出し、計19カ国が同宣言に署名した(2025年11月13日記事参照)。

気候変動の緩和策をめぐる欧州での連携について、ピケット・フラティン環境相は、おおむね一致しているとしながらも、いくつかの目標について意見の相違があると指摘。EU27カ国はそれぞれ経済状況も異なり、各国は自国の実情に合った解決策を見いださなければならないと述べた。

自国の産業を守りながら気候変動対策でどこに重点をおくのか、政府のかじ取りはますます重要となる。ブラジルが主導し、今回のCOP30の目玉ともいえる、森林保護を目的とした熱帯林ファイナンス(TFFF)の設立宣言には、53カ国が参加したが、報道によるとイタリアは不参加。また、欧州委員会が2025年7月に発表した、EU全体の温室効果ガス排出量を2040年までに1990年比で90%削減するという数値目標にイタリアは反対している(2025年7月8日記事参照)。さらに、欧州委が目標としている2035年以降の内燃機関自動車の新車販売禁止についても、イタリア政府は慎重な立場をとっている(2024年12月2日付地域・分析レポート参照)。

(平川容子)

(イタリア、ブラジル、EU、世界)

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