米テネシー州のVW工場、組合員投票でストライキ実施を承認、交渉次第で実施の可能性
(米国、ドイツ)
アトランタ発
2025年11月04日
全米自動車労働組合(UAW)は10月29日、フォルクスワーゲン(VW)のテネシー州チャタヌーガ工場で、ストライキ実施の可否を問う投票を行い、ストライキ実施が承認されたと発表
した(注)。投票は10月28~29日に行われ(2025年10月27日記事参照)、組合員の3分の2以上の賛成を得た。これにより、UAW交渉委員会が必要に応じてストライキを呼びかける権限を得たことになる。ストライキの日程は設定しておらず、同委員会はVW経営陣とのさらなる交渉を求めている。
UAWは、今回のストライキ実施可否を問う投票は米国自動車大手3社〔ゼネラルモーターズ(GM)、フォード、ステランティス〕以外の自動車メーカーで初めて行われたもので、歴史的な出来事としている。UAWの発表では、「私の知る限り、大多数の人々はVWの『最終提案』を望んでいない」「ストライキはしたくないが、実施される場合は参加する」といったチャタヌーガ工場の組合員の声を紹介している。
今回の結果に対し、VW側は「ストライキはチャタヌーガ工場の全従業員と地域社会にとって有害だ」「ストライキが発生した場合、当社はストライキに参加する選択をした従業員が安全に出勤できることを保証し、全額の給与と福利厚生を引き続き受けられるよう努める」と述べた(ニュースチャンネル9abc10月29日)。UAWによると、ストライキ実施時には、全組合員に週500ドルのストライキ手当と医療保障が組合から支給されるとのことだ。
大手3社以外でのUAW傘下の労働組合結成については、メルセデス・ベンツのアラバマ州タスカルーサ工場で従業員投票での否決により、いったんは大きな動きが止まっている(2024年5月21日記事参照)。一方、今回のVWチャタヌーガ工場での動きは、大手3社以外で組合に加入した労働者の主張の高まりを浮き彫りにしており、今後、米国自動車産業全体の労使関係に影響を与える可能性があるとの指摘もある(CBTニュース10月30日)。
(注)UAWは2023年11月29日に、米国で組合を持たない自動車メーカー13社に勤務する約15万人の労働者向けに、組合への加入を促すキャンペーンを開始した(2023年12月8日記事参照)。キャンペーンの結果、2024年4月にVWのチャタヌーガ工場でUAW傘下の労働組合結成が可決され、米国自動車大手3社以外の自動車メーカーの南部の工場で初めて労働組合が結成された(2024年4月23日記事参照)。対象となった自動車メーカーは、日系のトヨタ、ホンダ、日産、スバル、マツダ、韓国系の現代、欧州系のメルセデス・ベンツ、BMW、VW、ボルボ、米国電気自動車(EV)メーカーのテスラ、リビアン、ルーシッドの13社。
(檀野浩規)
(米国、ドイツ)
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