秋田市でAIデータセンター建設に向けた連携協定締結

(日本、アラブ首長国連邦)

秋田発

2025年11月18日

秋田市と、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビと米国に拠点を置くIT関連スタートアップのビットグリット(Bitgrit、注1)、秋田市に本社を置くIT関連企業のエスツー(注2)は1027日、秋田市で人工知能(AI)データセンターの建設に向けた連携協定を締結した。建設予定地は秋田市が造成する飯島地区の再エネ工業団地(北部地区再生可能エネルギー工業団地)で、2033年の本格運用開始を目指す。

写真 連携協定に署名した、左からBitgritの向縄嘉律哉CEO、秋田市の沼谷純市長、エスツーの須藤晃平代表取締役CEO(秋田市提供)

連携協定に署名した、左からBitgritの向縄嘉律哉CEO、秋田市の沼谷純市長、エスツーの須藤晃平代表取締役CEO(秋田市提供)

データセンターを秋田市に設置するメリットは多岐にわたる。第1に、データセンターは300~500メガワット(MW)規模と、日本最大級の電力使用量を想定している。その一方で、秋田県では洋上を含む風力発電の先進地域で(2025年10月23日2025年10月28日記事参照)、大容量の電力を必要とするデータセンターの設置は地元産のクリーン電力の有効活用につながる。

第2に、秋田での新規産業創出の可能性だ。データセンターを核とし、AI関連のソフトウエア、ハードウエアの研究開発拠点の誘致や、大学発を含むスタートアップの育成につながる可能性もある。Bitgritとエスツーは、AI関連の先端研究を行う東京大学の松尾・岩澤研究室とも協力しているという。秋田市の沼谷純市長は協定締結式の席で「データセンターの建設は世界のデータサイエンティストとつながる企業が秋田市に来ることにつながる」と述べ、同市が世界的なAI関連産業のハブとなることへの期待を示した。

第3に、災害対策を含む立地のしやすさの観点だ。太平洋側は需要地の大都市が多い一方、大規模データセンターの好適地は見つけにくい。南海トラフ地震など大規模災害のリスクも指摘される。その一方で、秋田ではそれらの懸念は相対的に小さい。

データセンターの設立に当たっては、Bitgritとエスツーが特別目的会社を設立し、UAEのアブダビ・グローバル・マーケット(ADGM、注3)の投資に加え、日本国内でデータセンターの建設、運用、利活用に関心を持つ企業からの投融資を募る。投資規模は最大4,000億円の見込みだ。

(注1)UAEのアブダビと米国に本拠地を置くスタートアップ。データサイエンティストのための人工知能(AI)競技会や、AIへのアルゴリズム提供プラットフォームを運営する。

(注2)サーバーやクラウドの設計、構築、運用保守などの事業を展開するほか、日本初のシニアeスポーツチーム「マタギスナイパーズ」を運営する。

(注3)アブダビ首長国の金融サービス促進機関・経済特区。

(梅津哲也)

(日本、アラブ首長国連邦)

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