洋上風力分野における人材育成と地域連携の先進事例を秋田県で視察
(日本)
イノベーション部戦略企画課
2025年10月28日
秋田市で10月15~17日に開催された世界洋上風力サミット(GOWS-Japan 2025、注1)(2025年10月23日記事参照)のサイドツアーの一環として、国内外の洋上風力関連企業が、秋田県男鹿市の洋上風力発電総合訓練施設「風と海の学校 あきた
」を視察した。同施設は、産官学(注2)が連携し、秋田県立男鹿海洋高等学校の一部を活用し2024年4月に開設した、洋上風力や海事産業の作業員を育成する訓練センターだ。
秋田県は、日本海から吹く安定した強風と遠浅で平たんな地形という地理的特性を生かし、全国最多の4海域が洋上風力発電の「促進区域」に指定されるなど、国内有数の洋上風力先進地域として注目されている。秋田県は、特に運転・保守(O&M)分野において長期的な人材需要が見込まれるとして、教育機関や企業との連携による育成体制の強化を進めている。
同施設は、単なる職業訓練施設ではなく、地域の教育・人材育成に貢献する地方創生の拠点としての役割も担っている。特筆すべきは、男鹿海洋高校の生徒や、近隣の小中学生がプロの作業員や船員の訓練の様子を間近で見学・体験できる環境が整っている点だ。日常的に訓練の現場に触れることで、洋上風力や海事産業への興味・関心を高めるきっかけとなり、将来的な人材の裾野を広げる効果が期待されている。また、同施設を起点とし、男鹿市や秋田県が洋上風力分野におけるヒト・モノ・情報の産業クラスターとなることを狙いとしている。
同施設では、洋上風車において作業をする技師向けの基本安全訓練や、船員向け基本安全訓練、操船訓練などを受講することができる(注3)。同施設には、水深10メートルの温水プールや最新鋭の操船シミュレーターが設置されており、実践的かつ安全な訓練が可能となっている。視察に訪れた企業は、シミュレーターを実際に操作しリアルな操縦かんを体験したほか、水深10メートルの温水プールで行われる風車への移乗訓練を見学した。施設関係者からは、最近では国内外の民間企業に加え、公的機関からの見学も増加しており、期待の高まりを感じるという声があった。
最新鋭の操船シミュレーター(ジェトロ撮影)
(注1)風力発電メーカー、開発業者、研究機関などからなるグローバル風力評議会(GWEC)が各国の関連団体と共催するもの。日本ではJWPAとともに2021年から実施している。秋田での開催は2回目。
(注2)関連組織は、日本郵船、日本海洋事業(海洋調査・深海調査・特殊船舶運航)、東北電力リニューアブルエナジー・サービス、日本海洋科学、秋田県、秋田県立男鹿海洋高等学校(高校施設の一部利用)、男鹿市(旧男鹿市立船川南小学校跡の利用)。
(注3)風力発電設備所有者や風力タービンメーカーにより設立された非営利団体Global Wind Organisation(GWO)が定めた基本安全訓練(BST5)のほか、STCW条約(船員の訓練および資格証明ならびに当直の基準に関する国際条約)で求められる船員基本訓練(STCW基本訓練)、洋上風力発電交通線(CTV)操船訓練などを提供している。
(齋藤碧)
(日本)
ビジネス短信 9a49901be8954971




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