2026年のGDP成長率目標は10%以上、国会が決議を採択
(ベトナム)
ハノイ発
2025年11月25日
ベトナム国会は11月13日、2026年の主要な社会・経済目標を定めた「2026年社会・経済発展計画」の決議を採択した(注1)。15項目から構成される目標のうち、GDP成長率の目標は10%以上に引き上げ、1人当たりGDPは5,400~5,500ドル、消費者物価指数(CPI)上昇率の目標は約4.5%以内とした。
2026年の主要な社会・経済発展目標15項目は次のとおり(注2)。
- GDP成長率(努力目標)は10%以上
- 1人当たりGDPは5,400~5,500ドル
- GDPに占める製造業の割合は24.96%
- CPI上昇率は4.5%
- 労働生産性の上昇率は8.5%
- 農業就業者の割合は25.3%
- 訓練を受けた資格・修了証を有する労働者は29.5%
- 都市部の失業率は1.0~1.5ポイント減
- 貧困率(多次元貧困の基準に基づく、注3)は0.8~1.0ポイント減
- 1万人当たりの医師数は15.3人
- 1万人当たりの病床数は34.7床
- 健康保険の加入率は95.5%
- 新農村基準(注4)を満たす村の割合は最低15%
- 都市部の日常生活における固形廃棄物の収集・処理の割合は95%
- 環境標準を満たす集中型排水処理システムが整備された工業団地・輸出加工区の割合は95%
国会は上記に併せて、マクロ経済の安定維持や、インフレ抑制、輸出市場の多様化、国内消費促進など、目標達成に向けて政府や関係機関が実施すべき対策についても決議した。重要プロジェクトを中心としたインフラ開発への公共投資の執行加速や、ハイテク分野の人材育成やイノベーションの促進、ビジネス環境の改善、民間企業の投資誘致を重視する方針も示した。
ベトナムは2025年のGDP成長率の目標を8%と定めており、2026年の10%超えは野心的な目標といえる。
今後の経済成長見通しについて、現地報道では複数の識者の意見を報じている(「ベトナム・ファイナンス」紙11月4日)。外資系投資ファンド、ドラゴンキャピタルCEOのレ・アン・トゥアン氏は「為替の安定性が金融緩和にも影響すると述べ、2026年のGDP成長率については8~10%になる」という見解を示した。
複合企業TTCグループのダン・バン・タイン会長は、「国は金利の引き下げなどで資金供給を促しているが、持続可能な成長のためには消費者の需要喚起も必要。また、公共投資は重要な推進力だが、あくまで一時的なものだ。民間経済開発に関する政治局決議68号(注5)などを踏まえ、企業家も国の発展のため最善を尽くすことが使命だ」と述べた。
世界銀行のエコノミストであるサシャ・ドレイ氏は「米国の相互関税に影響される農水産物や衣料品などの主要産業はコスト削減や輸出構成を再考する必要がある。ベトナムの保有する広範なFTAネットワークのポテンシャルを、特にアジア・欧州市場では十分に生かしきれていない」と指摘した。
(注1)国会組織法に基づき、国会が毎年の社会・経済目標を決議する。また、政府としても、各年度初め(1月)に社会・経済目標を公表する。
(注2)2025年の目標値は項目ごとに設定方法・設定時期が異なるため、各項目の目標値、基準等については2024年11月19日記事、2025年3月14日記事も参照。
(注3)健康、教育、生活水準などの基準から貧困の程度を測る。ベトナムでは政令7号(7/2021/ND-CP)で2022~2025年の基準を規定。
(注4)農村が達成すべき計画、経済・社会インフラ、経済活動・生産組織、文化・社会・環境、政治システムの基準を示したもの。
(注5)ベトナム共産党が中期的な経済成長のため、民間企業の活性化など経済分野の構造改革の方向性を示した文書。詳細は2025年9月8日付地域・分析レポート参照。
(グエン・ラン、萩原遼太郎)
(ベトナム)
ビジネス短信 420dcf5f5105adfa




閉じる
