トランプ米政権、中南米4カ国、スイス、リヒテンシュタインと相互貿易協定の枠組みに合意

(米国、エルサルバドル、アルゼンチン、グアテマラ、エクアドル、スイス、リヒテンシュタイン)

ニューヨーク発

2025年11月18日

米国のトランプ政権は11月13日、エルサルバドル、アルゼンチン、グアテマラ、エクアドルの中南米4カ国、翌14日にスイス、リヒテンシュタインと相互貿易に関する協定の枠組みに合意したと発表した。

トランプ政権が発表した中南米諸国との合意をまとめたファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、これら一連の合意について、米国と各国との間にある「経済・国家安全保障上の課題について約束し、2国間の貿易投資協力を深化させることで、米国の輸出者に対して中南米市場への前例のないアクセスを提供するもの」と、その意義を説明している。その上で、エルサルバドルについては農産品に対する非関税障壁の撤廃、アルゼンチンについては特定の医薬品、化学品、機械、情報技術(IT)製品、医療機器、自動車、農産品などの米国への優遇的な市場アクセスの提供、グアテマラについてはWTO電子商取引交渉における電子送信への関税不賦課の暫定合意(モラトリアム合意)を恒久的に支持することの約束(注1)、エクアドルについてはナッツ、生鮮果実、豆類、小麦、ワイン、蒸留酒などの関税障壁の撤廃または削減などを具体的な成果として記載した。

一方で、米国側の措置には、米国で十分な量を栽培・採掘・生産できない特定原産品に対して、最恵国待遇(MFN)関税を適用すると記載した。各国との共同声明によると、それら原産品への相互関税を撤廃し、MFN関税を適用する。さらに、ドミニカ共和国・中米・米国自由貿易協定(DR-CAFTA、注2)の原産地規則を満たしたエルサルバドルとグアテマラの繊維・アパレル製品も、相互関税の対象外とすると記した。米国とこれら中南米4カ国は今後数週間のうちに、協定署名に向けた最終調整を進めるという。

スイスとリヒテンシュタインとの共同声明によると、今後5年間でスイスは少なくとも2,000億ドル、リヒテンシュタインは少なくとも3億ドルの対米投資を促進する。一方で、米国は両国の原産品に対する関税率を、MFN関税と相互関税の合計で15%とする。MFN税率が15%以上の場合にはMFN税率を課す(注3)。また、米国で栽培・採掘・生産できない、あるいは国内需要を満たす十分な量を生産できない製品を記した「連携パートナー向け潜在的関税調整」(2025年9月8日記事参照)に列挙された特定の品目に対しては、MFN関税のみを適用する。さらに、医薬品と半導体が1962年通商拡大法232条に基づく追加関税の対象となる場合、両国産品に対する関税率は15%を超えないようにする(注4)。共同声明では、3カ国はこれら合意事項を履行するため、2026年第1四半期(1~3月)の協定締結を目標に交渉を開始すると記した。

これら共同声明とファクトシートは次のとおり。

(注1)トランプ政権は「米国第一の通商政策(AFTP)」に関する報告書で、電子的取引に関税が課されないという暫定的な取り決め「モラトリアム合意」が恒久化されるよう提言している(2025年10月9日記事参照)。

(注2)DR-CAFTAは、2004年8月に米国、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、ドミニカ共和国との間で調印された自由貿易協定(FTA)。

(注3)スイスとリヒテンシュタインは関税同盟を締結していることから、米国は両国に同じ関税率を適用する。

(注4)米国は232条に基づき、医薬品と半導体に対する調査を進めている(2025年4月15日記事参照)。

(赤平大寿)

(米国、エルサルバドル、アルゼンチン、グアテマラ、エクアドル、スイス、リヒテンシュタイン)

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